サイト終了のお知らせ

平素より「OneNews」をご利用いただき、誠にありがとうございます。本サイトは2024年5月15日をもってサービスを終了いたします。
サービス終了後、OneNews掲載の一部コンテンツ(ビジネス記事、マネー記事)は、
当社運営メディア「ウォーカープラス」に引き継がれますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。

横川楓の「ミレニアル世代のお金の常識」【第10回】若者に民間の保険は本当に必要なもの?「安心をお金で買う」を考える

2023/04/04 18:30 | 更新 2023/04/05 08:20
SHARE

「やさしいお金の専門家/金融教育活動家」こと横川楓です。今回のテーマは、「保険」です。日々、みなさんも各種のメディアを通じて保険の広告を頻繁に目にしているでしょう。でも、まだ収入が低くて結婚もしていない若い世代の場合、「保険ってよくわからないし、自分にはまだ関係ないんじゃないかな」と思っている人も少なくないと思います。そもそも保険に入る必要はあるのでしょうか?

【やさしいお金の専門家/金融教育活動家】横川楓さん
【やさしいお金の専門家/金融教育活動家】横川楓さん【撮影=阿部昌也】


「保険」にはどんな種類がある?

ひとことで「保険」といってもさまざまな種類があります。まず、日本では「国民皆保険」といって、すべての国民が「健康保険」に加入することになっています。自営業者なら「国民健康保険」に加入しなければなりませんし、会社員なら健康保険組合や全国健康保険協会が運営する「社会保険」に勤務先の会社を通じて加入します。

また、加入が義務づけられている健康保険と違って、自分で加入するかどうかを決める保険が「民間の保険」です。その代表的なものが「生命保険」でしょう。生命保険というと、その名称の印象から、被保険者が亡くなったときに保険金を受け取れる「死亡保険」をイメージする人も多いと思いますが、生命保険が意味するのはそれだけではありません。

死亡保険のほか、病気になったりケガをしてしまったりしたときに給付金を受け取れる「医療保険」、介護が必要な状態になったときに給付金を受け取れる「介護保険」なども含めた総称が生命保険です。

また、民間の保険のことを考えるうえでまず知っておいていただきたいのが、健康保険に加入していることで利用できる「高額療養費制度」というもの。これは、1カ月のうちに医療機関や薬局の窓口で支払った金額が一定の自己負担限度額を超えた場合に、その超過分が払い戻されるという制度です。例えば、年収400万円の人が入院して30万円を支払ったとしたら、必要な申請さえすれば、自己負担額の上限である8万7430円を超えた21万2570円が払い戻されます。

また、前もって「限度額適用認定証」というものを受け取っていたり、マイナンバーカードを健康保険証として利用するための事前登録をしていたりすれば、はじめから自己負担限度額だけを支払うだけで済むという仕組みも用意されています。

これまでに大きな病気やケガをしたことがない人のなかには、この制度の存在自体を知らなかったという人もいるかもしれませんが、これだけ自己負担額が軽減されるというのは収入が高くない若い人たちにとっても非常にありがたい制度ではないでしょうか。

病気療養中に生活を守ってくれる「傷病手当金」

そもそも国民全員が健康保険に加入していて医療費の自己負担額が原則的に3割に抑えられているうえ、高額の医療費を支払ったときには自己負担限度額超過分が払い戻される——。そう考えると、医療費をめぐる日本の公的制度はとても充実しているといえます。

さらに、会社員の場合なら、「傷病手当金」という制度もあります。これは、病気やケガによる休業中に被保険者とその家族の生活を保障するための制度であり、休業中でも基本的に給料の約3分の2が1年6カ月の範囲で支給されるというものです。病気やケガをしてしまったからといって、収入がまったく途絶えてしまうということはないわけです。

ですから、入ってくる収入が少ないうちは経済的な無理をしてまで保険に入る必要はないというのが私の考えです。ただし、それもやはり人それぞれということになるでしょう。傷病手当金を受け取れる会社員であっても給料が減るうえに医療費を支払わなければならなないのですから、そもそも収入が低い人の場合なら、給料の3分の2が支給されるとはいえ生活が苦しくなると感じる人もいるはずです。

それこそ自営業者の人の場合ならなおさらですよね。国民健康保険に加入している人の場合、新型コロナウイルス感染による療養のために仕事ができなくなったケースに限っては傷病手当金が支給される自治体もありますが、他の病気やケガの場合には基本的にはその支給はありません。

「保険に入ったつもり貯金」で備える

【写真】「自分にとって最適な保険をチョイスするように心がけてほしい」毎月定額を保険に入ったつもりで貯金するのもおすすめ
【写真】「自分にとって最適な保険をチョイスするように心がけてほしい」毎月定額を保険に入ったつもりで貯金するのもおすすめ【撮影=阿部昌也】


ですから、「どうしても不安だ……」と感じる人であれば、民間の生命保険への加入を考えてみてもいいと思います。収入が限られている若い世代の場合、健康保険や高額療養費制度、傷病手当金といった制度が土台にあることを認識したうえで、プラスアルファで少額のものから加入を検討するというのが基本線となるでしょうか。

ただ、若い人の場合なら、保険料が安いものもあるということはぜひ知っておいてほしいところ。生命保険は、加入時の年齢が若ければ若いほど月々の保険料も安くなります。なかには毎月の保険料が1000円未満の保険もあるほどです。

もちろん安ければ保障内容が少なくなる場合もあるので、自分の安心のために必要な保障内容と保険料を照らし合わせながら、自分にとって最適な保険をチョイスするように心がけてほしいと思います。

ただ単に「不安だから……」という理由であれこれと保障内容を増やしてしまうと、それだけ保険料は高額になります。そうして家計が苦しくなってしまえば、それこそふだんの生活に「不安」を感じるようになるのですから、本末転倒といわざるを得ません。

ですから、話が戻るようですが、収入が高くない若い人の場合であれば保険に入るのではなく、まずは「毎月定額の保険料を支払っているつもり」でその分を貯金にまわすこともおすすめします。そうして貯めたお金は、病気になったときはもちろん、ほかの急な出費への備えにもなってくれるのですからね。

この記事のひときわ#やくにたつ
・「保険」の種類を知る。
・「毎月定額の保険料を支払っているつもり」でその分を貯金にまわす考えも

構成=岩川悟(合同会社スリップストリーム)、取材・文=清家茂樹、撮影=阿部昌也

『ミレニアル世代のお金のリアル』 フォレスト出版(2019)
横川楓 著

【プロフィール】横川楓(よこかわ・かえで)
1990年生まれ。経営学修士(MBA)、ファイナンシャルプランナー(AFP)などを取得。やさしいお金の専門家/金融教育活動家として、「誰よりも等身大の目線でわかりやすく」をモットーにお金の知識を啓蒙、金融教育の普及に取り組んでいる。 2022年1月には一般社団法人金融教育推進協会を設立し、代表理事となる。マネーコンテンツ制作や企業や官公庁のアドバイザー、セミナー講師、雑誌・WEB・テレビなどメディア出演多数。
Twitter:@yokokawakaede
公式ホームページ

あわせて読みたい

人気ランキング

お知らせ