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タイで美意識の高い女性にヒット!“未知の飲み物”甘酒を人気商品に導いた戦略とは!?マルコメタイランドに話を聞いた

2023/04/11 09:00 | 更新 2023/04/11 10:28
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味噌業界で国内でNO.1シェアを誇るマルコメ株式会社。これまで「だし入りみそ」「液みそ」など、ほかとは一線を画す商品づくりが注目されてきた。最近では、味噌の原材料である米糀や大豆に着目した「プラス糀シリーズ」「ダイズラボシリーズ」なども話題に。また、アメリカや韓国、タイなどに現地法人を構え、海外の売上も右肩上がりとなっている。

そんなマルコメ株式会社は、2018年に子会社となる味噌の専門店「蔵乃屋株式会社」を開業。現在、日本では2店舗とECサイトを展開しているが、2022年12月に3店舗目かつ海外では初店舗をタイ・バンコクのショッピングモールにオープン。その蔵乃屋のオープンについてマルコメタイランド代表取締役社長の山本佳寛さんに伺った第1弾のインタビューに続き、第2弾では2013年の設立からちょうど10年という節目を迎える同社が蔵乃屋以外にも展開している、アンテナショップとカフェの店舗戦略について話を伺った。

マルコメタイランド代表取締役社長の山本佳寛さん
マルコメタイランド代表取締役社長の山本佳寛さん【写真提供】Marukome (Thailand) Co., Ltd.

ーー2019年2月には、常設アンテナショップとして海外初となる「発酵らぼ(Hacco labo)」もバンコクにオープンされていますが、開業された目的は?

2019年にマルコメ初となった、海外の常設アンテナショップ「発酵らぼ」を開業
2019年にマルコメ初となった、海外の常設アンテナショップ「発酵らぼ」を開業【写真提供】Marukome (Thailand) Co., Ltd.

【山本佳寛】当社の味噌や糀甘酒といった発酵食品、健康を軸にした新たな食を提案することで、タイ国内での話題化を図り、バンコクからアジアや世界へ向けて情報を発信していくことです。また、当社が本社を置く長野県と連携し、海外に向けた長野県のPRや県内企業の商品を販売することで「発酵食品を世界に広げていく」という当社ビジョンとの相乗効果を高めていくことも狙いです。

ーー「発酵らぼ」では、どのような商品を扱っていますか?また、その中で現地の方々に支持されている商品も教えてください。

「発酵らぼ」では、自社商品だけでなく本社がある長野県産商品も並ぶ
「発酵らぼ」では、自社商品だけでなく本社がある長野県産商品も並ぶ【写真提供】Marukome (Thailand) Co., Ltd.

【山本佳寛】生味噌、インスタント味噌、糀甘酒、塩糀、大豆肉、大豆粉など、自社商品は100アイテムほど扱っています。また、七味、高野豆腐、市田柿(いちだがき)、そば、めんつゆなど長野県産食品も販売しています。

【山本佳寛】そのなかで人気ナンバーワンは、甘酒です。弊社で扱っている糀甘酒は酒粕の甘酒とは異なりアルコールゼロで飲みやすいことが特徴で、日本でも人気ですがタイでも好評です。ほかに、味噌漬けの素などスーパーで扱ってないような特徴のある商品なども人気です。インスタント味噌汁も、国籍問わず人気ですね。

ーー甘酒が人気ということですが、2019年「発酵らぼ」開店と同時に、別スペースにて甘酒を楽しめるカフェ「KOJI BIJIN CAFE」もオープンされていますが、こちらの狙いやターゲット層も教えてください。

バンコクの「KOJI BIJIN CAFE」。糀甘酒だけでなく、甘酒を使ったスイーツも人気
バンコクの「KOJI BIJIN CAFE」。糀甘酒だけでなく、甘酒を使ったスイーツも人気【写真提供】Marukome (Thailand) Co., Ltd.

【山本佳寛】「KOJI BIJIN CAFE」は、現在は発酵らぼのなかに併設しており、「KOJI BIJIN CAFE」としては高島屋店、Vimut(ウィムット)病院店と2店舗展開しています。こちらは、甘酒を気軽にカフェ感覚で楽しんでもらいたいというコンセプトでスタートしました。カフェスタイルで提供することで、未知の飲み物である甘酒の魅力をより消費者に近いところで説明ができるようになります。そうすることで消費者の皆さんが、気軽にチャレンジできればと考えました。ターゲットは、流行に敏感な10代から30代の女性です。

ーー“未知の飲み物”状態だった消費者に、甘酒の魅力をどのように伝えていったのでしょうか?

「KOJI BIJIN CAFE」の甘酒の価格帯は65バーツ~100バーツと、一般的に1杯50バーツというコーヒーに比べて少し高めの設定だが美意識の高い女性に支持されている
「KOJI BIJIN CAFE」の甘酒の価格帯は65バーツ~100バーツと、一般的に1杯50バーツというコーヒーに比べて少し高めの設定だが美意識の高い女性に支持されている【写真提供】Marukome (Thailand) Co., Ltd.

【山本佳寛】特に社会進出されているタイの女性は美への意識がとても高いので、まずは女性をターゲットに「美」というコンセプトで広告展開をしていきました。また、年間20回以上のイベントを行っていますので、そこでフリーサンプルを提供したり、ファウンテン(簡単にジュースが注げるサーバー)を使って販売をしたりして身近なものにしていく、という作業をしました。

【山本佳寛】また、酒粕から作る甘酒は酒粕に砂糖と水を加えて作られるのですが、弊社の糀甘酒は米麹と水で作っており、砂糖を使用していません。タイでは2017年に健康増進のために砂糖税(※)が導入されたこともあり、砂糖不使用の糀甘酒がポジティブに受け入れられたのかもしれません。
※タイでは、2017年9月から国民の過剰な砂糖摂取の予防を目的に、輸入品を含め、砂糖を含有する飲料に対する物品税が導入されている

【山本佳寛】全体にはまだまだ…という状況ですが、情報感度の高い方には、甘酒の魅力が浸透してきたと感じています。マルコメタイランドのFacebookでも、一番反応がいいのは甘酒についての投稿ですので、そういった意味でも浸透してきているなと思います。

ーーSNSも積極的に活用されているのですか?
【山本佳寛】タイでは、SNSはFacebookが最多、次にInstagramの利用者が多いという状況です。ですが、タイではそれぞれ日本とは使い方が違っており、弊社では、各SNSの特性や利用者(ターゲット)によって、情報発信のSNSを使い分けています。例えば、「KOJI BIJIN CAFE」はFacebook、昨年オープンした味噌専門店「蔵乃屋」はInstagramを用いています。

ーー「KOJI BIJIN CAFE」の人気商品を教えてください。

一番人気のプレーンの甘酒。マルコメの「糀甘酒」は酒粕の甘酒とは異なり、アルコールゼロで飲みやすい
一番人気のプレーンの甘酒。マルコメの「糀甘酒」は酒粕の甘酒とは異なり、アルコールゼロで飲みやすい【写真提供】Marukome (Thailand) Co., Ltd.

【山本佳寛】カフェで提供している甘酒はフルーツなどでブレンドしているものもそろえていますが、一番人気はプレーンの甘酒です。ただ、ここ数年、タイでは柚子フレーバーが流行しており、「KOJI BIJIN CAFE」でも柚子をミックスした甘酒が人気です。ゆずは苦さや渋みがあるフレーバーなのであまり好まれないのかなと思っていたのですが、そういったものが流行してきたということは、タイの方々の味覚が変化してきているのかなと感じています。

ーーやはり現地の流行も取り入れているのですね。
【山本佳寛】流行を取り入れたり、シーズン限定の商品なども開発しており、それが人気で定番商品になることもあります。また、カフェでは、ドリンクだけでなく、甘酒や大豆粉を使った、パンナコッタやチーズケーキ、クッキーやマフィンなどスイーツも提供しており、消費者が飽きないような演出を心掛けています。

ーースイーツにも甘酒を使用しているのですか?
【山本佳寛】はい。砂糖の代わりに甘酒を使用したり、ミルク不使用など、いわゆる「ギルトフリー」なスイーツを提供しています。スイーツに関しては小さめにして価格も抑えているので、学生の方がちょっと食べるために買われたり、会社員の方がおやつに食べようと、ランチタイムに買われて行かれる方もいらしゃいます。

ーーリピーターの方は多いですか?
【山本佳寛】発酵らぼに関しては、5年目に入っていますがほぼリピーターの方です。蔵乃屋についてはオープンして4カ月弱ですが、毎週来られるようなリピーターの方もすでに見受けられますね。

ーーこれから新規開拓へもますます力を注がれていくと思いますが、その基軸となるのは?
【山本佳寛】マルコメタイランドとしては、イベントが一番の広告代わりと捉えています。というのは、タイでは日本のように全国隅々まで商品が届いているわけではありません。まだ田舎のほうでは味噌や甘酒自体が何かというのがわからない方もいらっしゃると思います。なので、実際に消費していただくお客様と直接お話をすることで、どんどん認知を広げていきたいと思っています。売れても売れなくても、商品のいいところ、悪いところを直で感じられるのがイベントのメリットですね。

【山本佳寛】お客様の反応を直に見るのは「発酵らぼ」でもできますが、場所を変えることでまたお客様も変わり、得られる情報も変わってくるので、それは今後の営業活動につながってくると思っています。

ーーイベントの場所はどうやって選ばれているのですか?
【山本佳寛】バンコクは「タイではない」と言われているくらい、住んでいる人も消費者も異質な地です。なので、バンコク内でも郊外なのか中心地なのか、またバンコク外の都市など、いろいろな場所へ行くことで、どこまで(自社商品や日本食文化の)認知が広がっているのか、と確認することもできます。

ーーマルコメタイランドのこの10年を振り返ってみて、いかがですか?
【山本佳寛】まず、卸売業については、順調にお客様を増やすことができていると思っています。タイに現地法人を設立する前は商社を通じて販売していたこともあり、その先の商談がしにくかった部分がありました。ですが、設立後はすべて直販することで、より必要なものを適正価格で提供できるようになり、売り上げも伸びています。流通のお客様からも信頼を得ることができ、アイテム数を増やすこともできています。

【山本佳寛】2019年から始めた店舗事業に関しては、まだまだという印象です。開店直後からコロナ禍になったという想定外のこともあり、思ったような展開ができませんでした。そういったなかでも、アンテナショップ、カフェ、味噌の量り売りというジャンルの違う3業態を展開できているのは、情報収集と広告宣伝という点ではいい結果になっていると思います。

ーーマルコメタイランドとして今後、より力を入れて行きたい事業などありましたら教えてください。
【山本佳寛】まずは、小売店でのコロナ後の既存顧客への対応の強化を図っていきます。タイはコロナ禍が明けて1年ほどたっており完全な「コロナ後」の状態で、外食への客足も戻っています。一方で、スーパーなどの小売業全体の来店者数や売り上げが落ちている状況です。小売業としてはお客様をもっと呼びたいという動きがあるので、我々もスーパーの店頭での販促などで協力し、売り上げ増につなげたいと思っています。

【山本佳寛】蔵乃屋については、まだオープンして間もないので、まず安定的に展開できる状況にしていくこと、利用してくれたお客様への商談などを強化できればと思っています。

「発酵文化圏である東南アジア各国へ味噌や日本食文化を発信する拠点に」との思いから設立されたマルコメタイランド。タイ国内で身近な調味料になりつつある味噌や、美や健康志向の追い風を受け注目を浴びる甘酒など、今後のさらなる躍進が期待されるマルコメタイランドから目が離せない。

この記事のひときわ#やくにたつ
・ターゲットや目的に合わせた広告活動を行うことが大事
・社会状況(当記事の場合、「砂糖税」「ギルトフリー」などの健康志向へと向っていること)を追い風にして一気に攻める
・消費者の反応を直に見られる「イベント」を営業活動などに生かす

取材・文=矢野 凪紗

■マルコメ株式会社
公式サイト https://www.marukome.co.jp/
海外での取り組み https://www.marukome.co.jp/company/world/

■蔵乃屋 公式サイト
http://www.kuranoya.co.jp/

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