大切なのは、地元民との信頼関係

――この事業をされるうえでの難しいところや、苦労されている点を教えてください。
【黒田康平】私たちが目指してるのはふるさと納税の自治体支援を通じて、次の産業の開発や課題解決を行うことなんですよね。ですが自治体や事業者さんなど関係してくる組織や人が多いので、それぞれとの信頼関係の構築が最も大変です。

【黒田康平】例えばですが、ブリのブランドを作りたいからといって、急に漁業組合に行って「ちょっとブリ食べさせてください」とか「一緒に事業やりましょうよ」って言われてもすぐには信用できないですよね。そこには、どうやって信頼していただくのかとか、私たちがぶれない活動や言動ができているかとか、乗り越えるハードルがたくさんあります。

――確かに、突然訪れても「なんだこいつ」と思われてしまうだけですものね。
【黒田康平】そうですね(笑)。例えば、自治体の職員さんのなかには、一度も住んでいる地域の外に出たことがないという方もいます。もちろん広告やマーケティング、営業などの商売の知識はありません。でも、その方はその地域のことを本当によく知ってるんですよね。

【黒田康平】互いの知識の差を埋めながら意見のすり合わせをしていくことが難しい点ですね。だからこそ、地域を一緒に盛り上げるパートナーとして少しずつ関係性を築くのが必要になります。お互いの知識や特徴を生かし合って事業をしていくことが成功につながります。

黒田さんの夢は「日本食をさらに世界に広げること」
黒田さんの夢は「日本食をさらに世界に広げること」【撮影=後藤巧】

 

世界に通用するブランドづくりを

――近年では都市部と地方の格差が広がりつつあります。黒田さんはこの点についてどのように考えてられていますか?
【黒田康平】今の日本って経済がすごく悪くなっていますよね。先進国では年収が日本だけ上がらないとか、物価も耐えきれなくなって上がってきてるとか、さまざまな問題が起こっています。その皺寄せとして地域の事業者さんへの影響が大きく出ています。このような状況で本当にしなければいけないことは「地域にブランドを生み出すこと」、そして「地域単位で強くなること」だと考えています。
 
【黒田康平】私たちができることは、食を通して地域ならではの産業を生むことだと思います。ふるさと納税の事業者はビジネスとして自治体の支援をしていますが、あくまでふるさと納税という仕組みがあってこそのものだと思います。この制度がなくなってしまうという可能性もありますからね。だからこそ、ふるさと納税の事業を一過性のものにするのではなく、得たお金をきちんと事業投資し、産業開発を行ってブランドを作り、最終的に地域が独自の魅力を持って、地域単体でお金を稼げるようになることが必要だと思っています。

【黒田康平】現在は5年単位でプロジェクトを動かしていますが、ふるさと納税についてはあと3年ぐらいで私たちの主軸から外していきたいと思っています。その代わり「地域のブランドを産んでいく」という事業に重きを置いていきたいですね。自治体単位で強いブランドが生まれるようなトレンドを作っていって、メイドインジャパンを国民全員で楽しめるようにしたいです。「日本食を食べるのってかっこいいよね」というような社会の雰囲気をつくれたらいいなと思いますね。

――日本の誇る食文化を、私たち自身で守って受け継いでいきたいですものね。
【黒田康平】そうですね。そして、クールジャパンではないかもしれないですが、日本のものって世界に愛されています。例えば日本はブリをアメリカに輸出していて、向こうでも人気が出ているんですよね。今回取り組んでいる先述の「極寒ブリ」は世界にも需要があるかもしれません。日本の食文化を世界に発信していく活動もしていきたいですね。

【黒田康平】ですが、まずは日本人が「食べたい!」と思えるようなブランドを作って、発信していくことが重要だと考えています。生産者と消費者をつなぎ、そして地域の魅力が伝わるような取り組みを、今度も引き続き行っていきたいと思います。そして、メキシコで事業をした知見を生かして、ワールドワイドな目線で事業を行っていきたいですね!

この記事のひときわ#やくにたつ
・制度の課題点や問題点にビジネスチャンスが眠っている
・ブランディングは商品価値を高める有効な手段

取材・文=福井求(にげば企画)、写真=後藤巧