客を満足させるのは「結果」だけではない。「起業支援」のプロが教える、客に満足をもたらす3つの要素

2023/03/28 18:30
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自分の仕事に対して、客が気持ちよくお金を払ってくれるにはなにが必要だろうか——。おそらくその答えは、客の「満足」となるだろう。相手がこちらの仕事に満足してくれなければ、最初こそお金を払ってくれてもリピーターとなることはない。では、客の満足を生むものとはなんだろうか。これまでに数多くの人の起業を支援してきた今井孝さんは、「『結果』だけが客の満足を生むと思っている人が多い」と語る。そして、そのために多くの人が「自分の力で稼いでみたい」と思いながらも、起業に踏み切れないのだという。

株式会社キャリッジウェイ・コンサルティング代表取締役の今井孝さん
株式会社キャリッジウェイ・コンサルティング代表取締役の今井孝さん【撮影=藤巻祐介】


とにもかくにも「一生懸命」に取り組む

起業することに憧れながらも、「自分の力では客を満足させられるかどうかわからない」と思っている人は多いものです。こういう人には「『客が満足してくれる』という確信」が欠けているために、「こんなことでお金をもらっていいのだろうか?」といった疑問や恐怖心が生まれます。その結果、「自分の力や好きなことで稼いでみたい」と思いつつも、起業への一歩を踏み出せなくなるのです。

そして、こういう人がフォーカスしているのは、「結果」だけです。つまり、「100%の結果を出さなければ、相手が満足してくれるはずがない」と思っているのです。しかし、人の満足を生むのは、結果だけではありません。人の満足を生む要素には結果以外にさまざまなものがありますが、そのなかでも商品やサービスによる満足と強くリンクしているものには以下の3つがあります。

【客に満足をもたらす要素】
①一生懸命な姿
②エンターテインメント性
③仲間ができる

ひとつ目の要素は①「一生懸命な姿」です。これが、人に満足をもたらす最大の要素といっていいでしょう。なぜなら、客が見ているのは仕事そのものの向こうにある、仕事をする側の姿や態度だからです。

わかりやすい例として学習塾の講師をとり上げてみましょう。どんなに優秀な講師であっても、生徒全員を第一志望の学校に合格させられるかといったらそんなことはありません。つまり、この講師は100%の結果を出せていないわけです。

ところが、受験後の学習塾でよく見られるのは、第一志望に不合格になった生徒たちも含め、講師に対して「ありがとう」と感謝を伝えているシーンです。つまり、生徒たちはその講師の仕事に満足しているのです。そういうことが起きるのは、その講師がまさに一生懸命に指導してくれたからでしょう。

もちろん、逆に「この人は手を抜いている」「面倒くさそうな対応をされた」というふうに思われれば、たとえそれなりに結果を出したとしても客が満足してくれることはありません。とはいえ、一生懸命にさえやっておけば客は満足してくれるのですから、これから自分の力で稼ごうと思うのなら、とにかくこの点だけは肝に銘じておくべきでしょう。

【写真】客に満足をもたらす要素は「一生懸命な姿」「エンターテインメント性」「仲間ができる」
【写真】客に満足をもたらす要素は「一生懸命な姿」「エンターテインメント性」「仲間ができる」【撮影=藤巻祐介】

どうにかして「楽しさ」を提供できないかと考える

客に満足をもたらすふたつ目の要素は、②「エンターテインメント性」です。以前、地方でセミナーをしたときにかなり売上が大きい会社の社長が参加してくれました。いわゆる地元の名士です。

当時は私が起業してまだ数年しかたっていないころでしたので、どうして私のセミナーに参加してくれたのか不思議に思ってその理由を聞いてみると、「学ぶのが好きだし、会社にずっといると息が詰まるから」というのです。

つまり、多くの人は「楽しさ」を求めているのです。たとえ間違いなく結果が出るとしても、そこに至るまでまったく楽しくないサービスというものでは人はなかなか満足してくれません。

例えば「絶対に○kg痩せられる」と保証しているパーソナルトレーナーがいるとします。でも、その人の指導や課せられるトレーニングがまったく楽しくないものだったとしたらどうですか?ただただ苦しくて我慢をし続けなければならないのですから、かなり苦痛を感じるはずです。結果を保証されているとはいえ、やはり客の満足感は低くなるでしょう。

スパルタ式の英会話教室、つらいだけのヨガ教室、重苦しい空気が漂う整体院、ただ淡々と講義が続くセミナー……。どれも人気が出ないことは容易に想像がつきます。

私の知人に投資教室を開いている女性がいます。講義の内容自体も素晴らしいのですが、彼女の話がおもしろいからと、受講生はずっと笑いながら話を聞いています。また、講義の他にも受講生と一緒に日本銀行や東京証券取引所の見学をすることもあるなど、まさに楽しさというものを提供しているのです。

もちろん、ジャンルによってはわかりやすくエンターテインメント性を打ち出すことが難しいサービスもあるでしょう。でも、そんななかでもどうにかして楽しさというものを提供できないかと考えることができれば、きっと多くの客を集めることができるようになると思います。

どうにかして「楽しさ」を提供できないかと考えることが大切
どうにかして「楽しさ」を提供できないかと考えることが大切【撮影=藤巻祐介】

人は本能的に「仲間」ができることによろこびを感じる

客に満足をもたらす3つ目の要素は、③「仲間ができる」です。集団生活を営む生き物である人間は、仲間ができると本能的に喜びを感じます。それこそ「一生の友だち」といった存在を見つけることができれば、金額に換算できない強い満足感を得ることができますよね。

ですから、ただサービスを提供するだけでなく、客同士の「横のつながり」をつくってあげることを意識すれば、それだけ客の満足感は高まっていきます。

以前、私の講義の懇親会で、「もう受講料の元が取れた」と喜んでくれた人がいました。10カ月の講義のうち、まだ2カ月目のことです。理由を問うと、「友だちができたから」といいます。それだけで、決して安くない受講料の元が取れたと思うほど満足してくれたのです。

みなさんにもそんな経験はないでしょうか。なにかの習い事をしている人であれば、その習い事そのものの面白さや上達していく達成感の他に、同じ習い事を志す仲間ができたことにも大きな喜びを感じているはずです。

習い事の教室を開くのであれば、チーム制のコンテストや発表会を開催する。居酒屋やバーを経営するのなら、例えば30代までの独身の客だけを集めるイベントを開いてみる。そんなふうにして客のなかに横のつながりができれば、客たちが簡単に離れていくことはありません。

いずれにせよ、客を満足させる要素は結果だけではないということです。自分自身がお金を使っている場面を振り返ってみれば、そうしたさまざまな要素に気づくことができるはずです。

人は本能的に「仲間」ができることによろこびを感じる
人は本能的に「仲間」ができることによろこびを感じる【撮影=藤巻祐介】

構成=岩川悟(合同会社スリップストリーム)、取材・文=清家茂樹、写真=藤巻祐介

『誰でもできるのに9割の人が気づいていない、お金の生み出し方』幻冬舎(2022)
今井孝 著

【プロフィール】
今井孝(いまい・たかし)
1973年7月12日生まれ、大阪府出身。株式会社キャリッジウェイ・コンサルティング代表取締役。大阪大学大学院修了。大手IT企業に約8年在籍し、新規事業を成功させる。独立1年後にはじめたセミナーには、10年連続で毎回300人以上が参加。トータルでは6000人以上になる。マーケティングやマインドに関するオリジナル教材が累計3000本上購入されるなど、3万人以上の起業家にノウハウや考え方を伝え、最初の一歩を導いた。ベストセラーになった『起業1年目の教科書』シリーズ(かんき出版)、『「君しかいない!」と言われる人になる』(イースト・プレス)、『起業の仕方見るだけノート』(宝島社)、『ひとり社長の最強の集客術』(ぱる出版)など著書多数。

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