「起業支援」のスペシャリストが指摘する、「起業に踏み切れない人」が持つ3つの思い込み

2023/03/21 18:00
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多くのビジネスパーソンが、「自分の力や好きなことだけで稼げる」ことに憧れを抱く。そうなったあかつきには、無理に会社にしがみつく必要も職場の人に気を遣う必要もなくなり、好きなことをして好きな人とつき合い、そしてお金も入ってくるだろう。ただ、そんなことに憧れつつも、その一歩を踏み出せない人も多いのが実情だ。そんな人はいくつかの「思い込み」を持っていると指摘するのが、これまでに数多くの人の起業を支援してきた今井孝さん。今井さんが、それらの思い込みが単なる思い込みに過ぎないことを解説してくれた。

株式会社キャリッジウェイ・コンサルティング代表取締役の今井孝さん
株式会社キャリッジウェイ・コンサルティング代表取締役の今井孝さん【撮影=藤巻祐介】


最初からたくさんの人に買ってもらう必要などない

これまでに「自分の力や好きなことで稼いだ経験がない人」、つまり自分で起業をすることができない人にはいくつかの思い込みがあると私は考えています。そのなかで特に多くの人にあてはまるのが、次の3つです。自分で稼ぐための一歩を踏み出すため、これらの思い込みを払拭していきましょう。

【「自分の力で稼いだことがない人」が持つ思い込み】
①たくさんの人に買ってもらわなければならない
②お金をもらうからには100%の結果を出さなければならない
③成功しなければ価値がない

①は、「たくさんの人に買ってもらわなければならない」というもの。でも、たくさんの人に買ってもらうことは簡単なことではありません。開発費や宣伝費、販売促進などに多額の費用をかけられる大企業にしかできないことといっていいかもしれません。

「お金を稼ぐ」というと、なんらかのものを売ることをまずイメージしがちです。お菓子でもなんでもいいのですが、世の中にあふれていて全国的に知られている商品をイメージすると、単価が安いだけに「たくさん買ってもらわなければならない」と考えます。でも、そういった商品が安いのは、大企業の商品でありそれこそ広くたくさん売ることができるからです。

では、個人の力で稼ごうというときに、そんな大企業と自分を比べる必要などあるでしょうか。最初からたくさんの人に買ってもらうことを目指すのは、登山を始めたばかりの人がいきなりエベレスト登頂に挑むようなものです。

それに、実際にはたくさんの人に買ってもらう必要などありません。世の中の商品やサービスは、たくさんの人に買ってもらわなければ商売として成立しないような安いものばかりではないからです。

私の知人の片づけコンサルタントが設定しているコンサル料は1件30万円です。もし10人と契約できればそれだけでトータル300万円になります。副業としては十分な金額ですし、仮に20人、30人と契約人数を増やせれば本業にすることも可能です。

【写真】「たくさんの人に買ってもらわなければならない」という思い込みを払拭していこうと語る今井孝さん
【写真】「たくさんの人に買ってもらわなければならない」という思い込みを払拭していこうと語る今井孝さん【撮影=藤巻祐介】

お金をもらったからといって、100%の結果を出す必要はない

自分の力で稼ぐための一歩をなかなか踏み出せない人が持つふたつ目の思い込みは、②「お金をもらうからには100%の結果を出さなければならない」というもの。3つの思い込みのうち、最も多くの人が持っているものがこれかもしれません。

では、100%の結果が出せなかったとしたら、いったいどうなるでしょう?多くの人が、「結果を出せないとクレームを入れられそう……」「返金しなければならない……」といったふうに恐怖を語ります。

でも、実際にはそんなことはないのです。この思い込みを持つがために起業に踏み切れない人に話を聞いたことがあります。これまでに習い事をした経験をその人に聞いてみたところ、英会話スクールに通ったことがあるといいます。

それで、「英語をしゃべれるようになりましたか?」と聞くと、答えは「いいえ」。では、「クレームを入れましたか?」と聞くと、またしても「いいえ」。「なぜですか?」と理由を問うと、「私がサボっていたから」と答えました。そう、10数万円の料金を払ってなんの結果も出なかったにもかかわらず、その人はクレームを入れたり返金を求めたりすることなどなかったのです。

もちろん、例えば飲食店やクリーニング店であれば、提供する商品やサービスに対して客が期待する一定の品質を保証しなければならないでしょう。でも、世の中には結果を保証できない商品やサービスもたくさんあるのです。

いまは英会話もそうですし、ほかにはパーソナルトレーナーなど人を支援する副業をしている人が増えています。「絶対に英語を話せるようになる」「絶対に○kg痩せられる」というふうに事前に保証しているなら別ですが、そうでないのなら「100%の結果を出さなければならない」などと思う必要はありません。自分自身の努力もなければ結果につながらないという商品やサービスも多いのです。

「お金をもらったからといって、100%の結果を出す必要はない」と語る今井孝さん
「お金をもらったからといって、100%の結果を出す必要はない」と語る今井孝さん【撮影=藤巻祐介】

ずっと成功し続けている人などほとんどいない

自分の力で稼ぐ最初の一歩を踏み出せない人が持つ3つ目の思い込みは、③「成功しなければ価値がない」というもの。

この思い込みは、まだ自分の力で稼いだことがない人だけでなく、実はすでに起業した経営者のなかにも持っている人が多いものです。フリーランスの人や起業家の集まりに行くと、「売上が高い人がいると緊張する……」なんて人もいるのです。

こういう人の多くは、「市場価値」と「人間的価値」とを混同してしまっているのだと思います。市場価値とは相手が感じる価値であり、その価値がどの程度のものになるかは買う側の欲求の強さによって決まります。買う側が「10万円」といえば10万円、「100万円」といえば100万円となるのが市場価値です。取引における市場価値は、買ってくれる人が決めるのです。

一方の人間的価値とは、自分が人間として存在して生きていることそのものの価値です。この人間的価値は、他人が決めるものではありません。「あの人には生きる価値があるけれど、あの人にはその価値がない」なんて誰かが決められるわけがないですよね?自分の人間的価値は、自分自身で決めるものなのです。

ところが、これらふたつの価値を混同してしまっている人もいます。「自分の力で稼ぐことができそうもないから、私には価値がない」と自分を低評価し、精神的に苦しくなります。そうして、結果的に起業に踏み切れなくなるというわけです。

でも、現時点で成功している人たち全員が、これまで一度も失敗することなく成功し続けてきたかといったらそんなはずがありません。倒産を経験している起業家なんて数え切れないほどいます。ほとんどの起業家が、これまでに何度も壁にぶつかり、浮き沈みを続けてきたはずです。そうして成功者となれたのは、市場価値と人間的価値をわけて考え、稼げなくなっているときにも自尊心を失わずに成功に向かって進み続ける強い心を持ち続けたからでしょう。

そもそも、人生の目的というのは、お金を稼ぐことなどではなく、自分なりの幸せをつかむことではないでしょうか。お金を稼ぐことはそのための手段に過ぎません。そして、自分が幸せを感じられるような、いわゆる「好きなこと」をやって少しでもお金を得ることができたなら、それだけ幸せに近づけるのだと思います。

市場価値と人間的価値をわけて考えることが大切
市場価値と人間的価値をわけて考えることが大切【撮影=藤巻祐介】


この記事のひときわ#やくにたつ
・最初からたくさんの人に買ってもらう必要はない
・お金をもらったからといって、100%の結果を出す必要はない
・市場価値と人間的価値をわけて考える

構成=岩川悟(合同会社スリップストリーム)、取材・文=清家茂樹、写真=藤巻祐介

『誰でもできるのに9割の人が気づいていない、お金の生み出し方』幻冬舎(2022)
今井孝 著

【プロフィール】
今井孝(いまい・たかし)
1973年7月12日生まれ、大阪府出身。株式会社キャリッジウェイ・コンサルティング代表取締役。大阪大学大学院修了。大手IT企業に約8年在籍し、新規事業を成功させる。独立1年後にはじめたセミナーには、10年連続で毎回300人以上が参加。トータルでは6000人以上になる。マーケティングやマインドに関するオリジナル教材が累計3000本上購入されるなど、3万人以上の起業家にノウハウや考え方を伝え、最初の一歩を導いた。ベストセラーになった『起業1年目の教科書』シリーズ(かんき出版)、『「君しかいない!」と言われる人になる』(イースト・プレス)、『起業の仕方見るだけノート』(宝島社)、『ひとり社長の最強の集客術』(ぱる出版)など著書多数。

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