“回転しない”新時代のグルメすし店へ。迷惑行為が取りざたされるなか「銚子丸」が全店フルオーダー化する背景とは

2023/03/18 12:00
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飲食店での迷惑行為を撮影した動画が、SNSで相次いで投稿されるなか、回転ずしチェーン「すし銚子丸」が、全店舗で回転レールを使用した商品の提供を終了すると発表した。2023年4月26日(水)までにタッチパネルを使用した「フルオーダーシステム」に順次変更していく。今回の件について、同社広報担当の下公祐二さんは「新時代のグルメすし店に向かうワクワクするような決断」と語る。フルオーダー化に至った理由や今後の展望について話を聞いた。

タッチパネルによるフルオーダー化に伴い、価格に合わせた色皿での商品の提供も廃止される
タッチパネルによるフルオーダー化に伴い、価格に合わせた色皿での商品の提供も廃止される


迷惑行為対策だけが目的ではない。フルオーダー化の狙いとは

――今回のフルオーダー化の目的は?
「第一の目的は、すべてのお客様のご注文に応じて、握りたて、作りたてのおいしいおすしを召し上がっていただくことです。コロナ禍以前から、レールに回っている商品を取って召し上がるお客様よりも、ご注文で作りたてを召し上がるお客様の方が圧倒的に多く、コロナ禍以降その傾向に拍車がかかりました」

「そうした状況もあり、フードロスを最小化するためにも、昨今はレールに商品をあまり多く流していませんでした。そのため大きなロスは出ていませんでしたが、ゼロではありません。限りなくゼロに近づけ、さらにフードロスを削減することが第二の目的です」

【写真】回転レーンを使用していたころの「すし銚子丸」店内の様子
【写真】回転レーンを使用していたころの「すし銚子丸」店内の様子


「第三はお会計の省力化です。タッチパネルから注文したデータをレジと連携しているので、会計時に皿を数える必要がなく、お客様がお食事中でもテーブルの上の皿を片付けることができます。省力化した分、お客様とのコミュニケーションの量と質の向上に振り向けられ、結果的に迷惑行為の抑止につながると考えます」

「また、タッチパネルによるフルオーダー化で、細やかなマーケティングデータが取得できるので、お客様のニーズに沿った商品企画や提供、原材料調達の効率化など、DXの一環として今後に生かしていきます」

――迷惑行為対策だけが理由ではないのですね。
「目的のひとつですが、メインではありません。今年2月に共用のガリの箱の中に電子タバコの吸い殻が混入しているということがありました。このことは、さらなる安全性確保に向けて取り組むきっかけにはなりましたが、フルオーダー化とは直接関係はありません」

人気メニューのひとつ「オーロラサーモン」396円
人気メニューのひとつ「オーロラサーモン」396円


フルオーダー化、トレンドの変化に沿った当然のこと

――回転ずしが回転しなくなるというのは、大きな決断だったかと思います。
「残念に思うお客様もいらっしゃるのは確かですが、『回転しない営業』を歓迎するご意見も非常に多く、快く受け入れて応援してくださることに感謝しております。しかし今回の件は、その残念という部分だけを大きく取り上げられ、悲しいニュースというニュアンスで報じられるのが残念です」

「私どもにとっては、お客様のマインドやトレンドの変化に沿った当然のことであり、むしろポジティブな、新時代のグルメすし店に向かうワクワクするような決断ですので、そういうニュアンスでお客様に伝わることを願っております」

――フルオーダー化にあたり苦労した点はありますか?
「もともとご注文で作りたてを召し上がるお客様の方が多いため、店舗運営としてはストレスなく移行できています。最も大きく変わるのは、お会計のオペレーションです。しかし結果的には早くて楽になるので、少し慣れが必要ではありますが、おおむね苦労はありません」

――回転レーンは今後どうなりますか?
「現在はPOPを流していますが、今後はエンターテインメント性の高い活用方法を検討するなど、新時代のグルメすし店の在り方を探っていきます」

「銚子丸オリジナル特製プリン」308円。人気のスイーツメニューで、SNSでは「すし銚子丸はプリン屋さん?」と話題になっている
「銚子丸オリジナル特製プリン」308円。人気のスイーツメニューで、SNSでは「すし銚子丸はプリン屋さん?」と話題になっている


――今後メインターゲットは変化しますか?
「以前から全店にタッチパネルを設置していました。既存のお客様は慣れていますし、フルオーダー化で省力できた分、年配の方をはじめとする機械操作が苦手なお客様にも、これまで以上にフォローできるようになります。お客様が求める方向への転換ですので、メインターゲットは変わりません」

――利用者にメッセージをお願いします。
「銚子丸は今回のフルオーダー化を、新しい時代のグルメすし店に向かうきっかけとして、前向きに取り組んでまいります。注文しなくても食べられる便利さや、好きなものが回って来る期待感、選ぶ楽しさなどが失われることは残念ですが、今まで以上においしい商品、楽しく、安心安全で、快適にご利用いただける『おいしい舞台』『おもてなし』を磨いてまいりますのでご期待ください。今後ともご愛顧賜りますようお願い申し上げます」

今回のフルオーダー化は、新しい時代へ向けた取り組みの一歩。「グルメ回転ずし」から「グルメすし店」へ、今後のさらなる変化に注目したい。

この記事のひときわ#やくにたつ
・デメリットを上回るメリットを提供する
・慣れ親しんだスタイルを守るより利用者のニーズを大切にする

取材・文=伊藤めぐみ

■すし銚子丸ホームページ
https://www.choushimaru.co.jp/

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