日本経済新聞社が、その年に記録的な売り上げとなった、もしくは流行した商品やサービス、事象などを発表する「日経MJヒット商品番付」。2022年の「東の横綱」として1位を飾ったのは「コスパ&タイパ」だ。その「コスパ」のよさで、テレビなどのメディアでたびたび取り上げられているのが「ドン・キホーテ」のPB「情熱価格」の商品である。単にコスパがよいだけでなく、ユーザーから商品に対する「ダメ出し」を募集し、その声をもとに商品の改善に取り組んでいるのが大きな特徴だ。

ドン・キホーテならではの「個店主義」について語る両角さん
ドン・キホーテならではの「個店主義」について語る両角さん【画像提供=株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス】

また、2021年には「情熱価格」から「チューナーレススマートTV」を発売し、爆発的な人気を博して世間を賑わしたのも記憶に新しい。その後も2022年には若年女性向けの「ときめきドンキ」や夜間営業に特化した「ナイトドンキ」などをオープンし、話題となっている。

今回は、「ドン・キホーテ」を運営する株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)のSPA推進部PB販促課の責任者である中武正樹さんと同部署の小出まどかさん、マーケティング戦略本部社外広報の両角利彦さんを直撃。「広報がおすすめする情熱価格5選」を教えていただくとともに、店舗展開などについて詳しく話を伺った。

左から、小出まどかさん、中武正樹さん、両角利彦さん
左から、小出まどかさん、中武正樹さん、両角利彦さん【画像提供=株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス】


若年女性向けのコーナー「ときめきドンキ」

「『ときめきドンキ』と『ナイトドンキ』ですが、両方とも店舗名ではないんです」

そう教えてくれたのは、社外広報担当の両角利彦さんだ。「ときめきドンキ」は、福岡市にあるドン・キホーテ中洲店の中にある「コーナー名」だと言う。2011年10月に、複合商業施設「gate’s(ゲイツ)」の2階部分にオープンした同店が、2022年11月に1階フロアを増床。そこに大きくとった最新コスメやグッズなどを取りそろえたコーナーを「ときめきドンキ」と名づけた。

中洲店1階の大部分を占める「ときめきドンキ」。入口(写真左)と店内の様子(写真右)
中洲店1階の大部分を占める「ときめきドンキ」。入口(写真左)と店内の様子(写真右)【画像提供=株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス】


「Z世代からミレニアル世代の女性をターゲットにし、ヘアアイロンなどの理美容家電や、コスメ、サンリオグッズなどを取りそろえたエリアになっています。想定していたお客さまにご来店いただけているようです。これは他店にはない新しい試み。今までとは一味違うお買い物をお楽しみいただける店舗づくりとなっています」と両角さんは語る。

「ナイトドンキ」というコンセプトで夜間に特化した店舗も

一方、「ナイトドンキ」は札幌市にあるドン・キホーテすすきの店の「店舗コンセプトの名称」。営業時間は13時から翌日の5時までと、「夜間営業に特化した店舗となっている」と両角さんは説明する。

「すすきのという立地から、夜間帯の需要に応える店舗づくりしています。営業時間はもちろん、取り扱っている商品も夜を意識していますし、店内のインテリアも非日常を演出。近隣の『MEGAドン・キホーテ札幌狸小路本店』との差別化を図っています」

「ナイトドンキ」というコンセプトを表現した店内
「ナイトドンキ」というコンセプトを表現した店内【画像提供=株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス】


若年層をターゲットにコスメやカラーコンタクト、バラエティグッズ、衣料品、酒類を強化するとともに、深夜の突発的なギフト需要に備えた「ギフトコーナー」などを設置。両角さんは「こちらも想定したターゲットにご来店いただけていると考えています」と話す。

ドン・キホーテの店舗づくりはエリアに合わせた“個店主義”

チェーン店は一般的に、同一のコンセプトで展開していることが多い。そんな中、日本で610店舗、海外店舗も含めると715店舗を展開する、ドン・キホーテを有するPPIHグループが、立地によってコーナーやコンセプトを変えているのはなぜか。

「弊社の店舗づくりは“個店主義”を取っています。画一的な店舗づくりをせずに、商圏や立地によってお客さまにとって都合のよい店舗を目指しているんです。そのため、中洲店とすすきの店も、その“個店主義”に則った店舗づくりの一環となります」

ドン・キホーテならではの「個店主義」について語る両角さん
ドン・キホーテならではの「個店主義」について語る両角さん【画像提供=株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス】


これからも、別のエリアではまた違うコンセプトの店舗ができる可能性があるというわけだ。今度はどのような店舗が生まれるのか、楽しみにしたい。

ドンキ発!社会現象とも言える「チューナーレスTV」

ドン・キホーテといえば、2021年12月に発売となった「チューナーレススマートTV」がTwitterなどのSNSで「地上波が映らないからNHKの受信料を支払わずに済む!」として話題になった。この商品は、YouTubeやAmazon Prime Videoなどの動画配信サービスのアプリをインストールして動画を視聴する、ネット動画の視聴に特化したモニターのようなもの。累計で2万3000台以上を販売する、ドン・キホーテの大人気商品だ。その人気は1年が経過した現在も健在だ。

「現在はラインナップも増やして、4K対応のものとフルHDのものをサイズ違いでご用意して4種類で展開しています。お客さまのニーズに合わせて、お買い求めいただいている状態です。『情熱価格』の商品に対するダメ出しを投稿できるサイト『ダメ出しの殿堂』にも『こういう商品を待っていました!』といった声はいただいていましたし、SNSでもすごく反響がありました」

新たにラインナップされた「43型4K対応チューナーレススマートテレビ」
新たにラインナップされた「43型4K対応チューナーレススマートテレビ」【画像提供=株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス】


この商品をきっかけに、他社でもチューナーレステレビが続々と発売されるなど、一種の社会現象を巻き起こしたとも言える。