驚きの価格を実現する、ドン・キホーテの商品開発の方法とは

価格、量、商品コンセプトにおいて驚きの商品がたくさん生まれている「情熱価格」だが、なかには「本当にこの価格で大丈夫なの?」と驚くものもたくさんある。そのひとつが、みかんの缶詰「みかん(身割れ)」だ。850gという大容量にも関わらず、200円強という驚きの価格で提供されている。ここまで安いと、売れすぎると赤字になってしまう商品もあるのではないかと心配になるほどだ。

思わず二度見してしまう値段とサイズの「みかん(身割れ)」
思わず二度見してしまう値段とサイズの「みかん(身割れ)」【画像提供=株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス】


「さすがに赤字になることはありません(笑)。どの商品もきちんと利益が出るように設計されていますから。他社はわかりませんが、弊社では商品を開発するときは、最初に価格を決めます。みかんの缶詰であれば、『2号缶いっぱいにみかんを詰めて、200円強で売る』と決める。そのうえで、どうすればこの価格でこの商品が作れるかを考え、その価格に収まるように努力するという方法をとっています」

グループ会社に貿易会社(株式会社パン・パシフィック・インターナショナル・トレーディング)もあるため、直接取引ができる工場など、中間マージンがかからない方法を探すといった企業努力も行っている。そうすることで、驚きの価格を実現しているのだ。

原材料高騰による値上げラッシュにも「ピープルブランドらしく対応したい」

消費者が驚くような価格設定の商品をたくさん開発している「情熱価格」。しかし、昨今何かと話題になっている値上げ問題に関しては、どのように取り組んでいるのだろうか。当然、ドン・キホーテとしても、原材料や包材などの値上がりは無関係ではない。現在の価格を維持することが厳しくなる可能性もゼロではないだろう。

「会社の方針というより、ブランドの姿勢としてのお話になりますが、商品に何の変更も加えることなく『原材料費が厳しくなったから値上げしますね』といったことはしたくないと考えています。しかし、例えば100円の家電製品があったとして、何か機能を追加することで、『リニューアル後は150円でお届けします』といったことはあるかもしれません。どちらにしても、『ピープルブランド』ですから、お客さまにも意見を伺いながら進めていきたいですね」

「厳しいダメ出し」も、よりよい商品づくりの糧に

「ダメ出しの殿堂」では、実際に各商品に届いたたくさんの「ダメ出し」を見ることができる。なかにはかなり厳しい意見も見られるが、開発部署のスタッフは「厳しい声も大歓迎」なのだという。

「ダメ出しの殿堂」では「その他のダメ出し」から、毎月ピックアップされる商品以外にもダメ出しを送れるようになっている
「ダメ出しの殿堂」では「その他のダメ出し」から、毎月ピックアップされる商品以外にもダメ出しを送れるようになっている【画像提供=株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス】


「私も、開発担当をしていたことがありますが、むしろダメ出しをいただけない商品は問題が全くない非常によい商品か、ダメ出しをするほどでもない、全く興味を持っていただけていない商品のどちらかではないかと思うんです。ダメ出しをいただくことで、商品がよりよくなっていくので、厳しい声であってもどんどん送っていただきたいですね。なかには、裏で泣いているスタッフもいるかもしれませんが(笑)、そういった声も含めて非常にありがたいと思って受け止めています。ぜひ、忌憚のないご意見をお送りください」

リニューアルから丸2年。「ピープルブランド」の名のとおり、ユーザーの声に応えて進化し続けている。中武さんは、「これからも驚きのあるニュースを届けていきたい」と笑顔で語ってくれた。今後もどんな商品でユーザーを驚かせてくれるのかが楽しみだ。

この記事のひときわ#やくにたつ
・価格でしか勝負できないような商品ではなく、ワクワク・ドキドキする商品を企画する
・ユーザーからのダメ出しは宝の山。必ずすべてに目を通す
・見た目やスタイリッシュさだけを追い求めて、利便性を蔑ろにしてはいけない

取材・文=神代裕子