田中道子、一級建築士試験に一発合格!「芸能の仕事をしていてよかった」と語る合格の裏側

更新 2023/02/20 11:01
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テレビドラマやバラエティへの出演に加え、昨年(2022年)は舞台で初の主演を務めるなど活躍の幅を広げる女優の田中道子さん。昨年12月には、なんと一級建築士試験に合格。合格率わずか9.9%という最難関の国家資格のひとつだ。芸能の仕事をしながら勉強する日々は、犠牲にしたものも大きかったという。なぜ受験しようと思ったのか、また、本業と試験勉強をどのように両立していたのか、本人に詳しく聞いた。

女優・田中道子さん/オスカープロモーション所属
女優・田中道子さん/オスカープロモーション所属【撮影=阿部昌也】


一級建築士試験への思い

――一級建築士試験への合格、おめでとうございます。あらためて、そのときの気持ちを教えてもらえますか?
【田中道子】一次の学科試験は準備期間が1年あったのでわりと自信はあったのですが、二次試験は2カ月の準備期間のあいだに舞台、ドラマ、バラエティなどのお仕事が重なったので、まったく時間が取れませんでした。私はただでさえ実務経験がない分、他の受験生よりも劣っている位置からスタートしているという自覚もあったので、本当に自信はなかったです。

【田中道子】設計図を描き終わったあとも、ひとつミスするだけで落ちてしまうような試験なので、蓋を開けるまで本当に結果がわからないまま結果発表の当日を迎えました。当日は結果発表のサイトが混雑していてなかなかアクセスできず、SNSでは他の人が(合否の)動画や画像を投稿していたのですが、ちょうど私の番号が見切れていて「ダメだっただろうな」と思いながらつながるのを待ちました。

――もどかしい時間ですね。
【田中道子】不合格だった場合、みんなにどうやって謝ろう……と考えながら番号を見ていたら自分の番号を見つけて。その瞬間、本当に“プツン”って音がしたんじゃないかってくらい頭が真っ白になったんです。震える手で何回も番号を確認して、一文字ずつ確認して、やっと実感したときは“ホッとした”という気持ちのほうが大きかったですね。もう、いろいろな感情が一気にきて、「私が受かっちゃっていいの?」という気持ちと「よかった」って気持ちと、一番は解放感ですかね、もう勉強しなくていいんだっていう。もう1年勉強するのは無理だと思っていたので本当にホッとしました。

――試験が終わったとき、手応えや自信はありましたか?
【田中道子】まったくなかったです。スパルタで有名な資格の学校に通っていて、覚悟はしていたものの、授業のたびに泣いていたくらいなので。というのも、先生が言っている専門用語が理解できず常に辞書を引いて人よりも遅れたり、周りが当たり前のように知っている“小ワザ”を知らなかったり、厳しいお言葉もいただいたりして。練習不足、復習不足とずっと言われていたので、受験の1週間くらい前までは「1年スキップしようかな」と悩んでいたくらい自信がなかったです。

【田中道子】二次試験(設計製図の試験)は6時間半という長丁場で、パズルみたいなんですよ。最初に立てた設定が間違っていると最後に気がついたときにはもう後戻りできない。最初の30分で、どんなに実力がある人も読み間違えれば落ちるし、建築基準関係の法律が重視される試験なので、その計算ミスをしてもアウトだし。でも逆に言えば、その最初の設定さえミスしなければ完成はできるはずなんです。

――本番でパズルがうまくハマれば誰にでもチャンスはあると。
【田中道子】そうです。親にも「鉄は熱いうちに打て、絶対に受けたほうがいい」と言われたので、それまでやってきたことと親を信じて受けました。自信はないままでしたが、芸能のお仕事のおかげで本番に強くなっていたのか、すごく冷静でした。周りはトイレに行く時間もないくらいテンパっている人も多かったのですが、私は2回くらいトイレに行って。そこで先生に言われたことを全部思い出して、戻ってもう1回チェックして、ということができるくらい落ち着いていました。「芸能のお仕事をしていてよかった」って初めて思ったかもしれない(笑)。

――確かに、芸能の世界は “本番がすべて”というイメージがありますね。
【田中道子】みなさん1時間のあいだに“爪痕を残す”みたいなお仕事じゃないですか。だから短時間に集中するというチカラはついたと思ってはいたのですが、一次試験も二次試験も自分の実力以上のものが出せたと感じているので、このお仕事に就けたことに感謝ですね。

自信はなかったが、本番は冷静に集中できたという田中さん「芸能のお仕事をしていてよかった」
自信はなかったが、本番は冷静に集中できたという田中さん「芸能のお仕事をしていてよかった」【撮影=阿部昌也】


――そもそも大学で建築を専攻されたのは、どういった理由だったのでしょうか?
【田中道子】最初は、『ファイナルファンタジー』というゲームが好きすぎてスクウェア・エニックスに就職したいと思ったのがきっかけです。

――かなりお好きなんですね!
【田中道子】はい、かなり(笑)。就職して、ゲームの作画をしたかったんです。小さいころから絵を描くことが好きで、青春時代にインスピレーションを受けまくっていたゲームなのでどうしても作品に携わりたくて。その中でも、主人公たちが旅する街のファンタジー感が大好きだったので、そのデザインをするのが夢でした。

【田中道子】いざ入学したのがデザイン学部の空間造形学科という学科なのですが、てっきり仮想の3D空間をデザインできると思っていたら建築系だったんです、リアル寄りの(笑)。周りは建築好きの人たちばかりだったからそこでも最初は落ちこぼれで、「アール・ヌーボーって何?」というレベルのところからスタートしました。難しいなと思いながら勉強していましたが、2年もするとけっこう楽しくなってきて。都市デザインを学んでいくと「あれ、これゲームにも生かせるじゃん」と思い、より興味が湧きました。だから大学生の後半くらいからですね、建築士になりたいと思ったのは。20歳くらいのころです。

――大学卒業後に二級建築士を取得してから8年ぶりに勉強したとのことですが、一級に挑戦しようと思ったきっかけは?
【田中道子】24歳のころに二級を取得して、32歳で一級の勉強を始めました。もともと大学生のころから一級は取りたいと思っていて、二級だと家の規模までしか建てられないので、建築士になるなら大きい建築物を建てたいという漠然とした理想があったんです。

【田中道子】ただ、以前は一級試験を受けるために2年の実務経験が必要で、芸能界にスカウトしていただいたとき事務所の社長に「2年の実務経験を積ませてください」と言ったら「何のために東京に出てきたんだ」とお叱りをいただいて、その通りだなと(笑)。当時はどちらかを選ばないといけなかったので芸能の道を選びましたが、令和2年度の試験から受験にあたっての実務経験が不要になったんです。それに加えてコロナ禍も私にとっては大きくて、芸能のお仕事がストップした時期があったじゃないですか。

――全体が止まってしまったタイミングがありましたね。
【田中道子】そのタイミングで、まとまった時間も取れるし何か勉強しようと思って、好きだったインテリアや、受験資格が要らない宅建を調べていたのですが、半年ちょっと過ぎたころに「せっかく受験資格が緩和されたし、今なら時間も取れそうだから一級に挑戦してみようかな」と思いついたんです、最初はほんの軽い気持ちで。

【田中道子】実際に勉強し始めて、国家資格には学習の推奨時間があるのですが、一級建築士は1000時間でした。自分的にそれをクリアできるのか計算してみたら月100時間くらい必要で。1日あたりにすると3、4時間だったのですが、わりとインドア派なので時間を確保することにはあまり苦労はなくて、「いけそうだぞ」と思い、試しに3カ月くらい勉強してみて、一昨年の10月くらいに本格的に勉強し始めました。

――そのときは事務所には相談されたのですか?
【田中道子】はい、しました。「実務経験が要らなくなって受験だけはできるから受けようと思うんだよね」と言ったら、周りもまさか受かるとは思っていないので「いいじゃん」みたいな軽い感じでした(笑)。私も最初から「こっち(芸能)のほうが本業だから絶対手は抜かない、むしろ前よりもしっかりやるので空いた時間は勉強に費やします」ということを伝えて、みなさんすごく応援してくださいました。

【田中道子】ドラマ撮影の空き時間に勉強していると共演者のみなさんも「何やってるの?」と聞いてくださって、受験の話をすると「頑張ってね」と応援してくださるので、よりやる気も出ますし、周りにどんどん宣言することで自分にハッパをかけたというのもありました。

8年ぶりの試験勉強で月100時間。「こっち(芸能)のほうが本業だから絶対手は抜かない、むしろ前よりもしっかりやる」と決意し取り組んだという
8年ぶりの試験勉強で月100時間。「こっち(芸能)のほうが本業だから絶対手は抜かない、むしろ前よりもしっかりやる」と決意し取り組んだという【撮影=阿部昌也】


本業と試験勉強の両立

――本業と試験勉強の両立は大変だったかと思います。
【田中道子】はい、頭の切り替えがもう大変でした。

――どのように切り替えていたんでしょうか?
【田中道子】何かやり出すとすごく集中するタイプなのですが、逆にそれしかできなくなってしまって、ドラマの期間に台詞を覚えようとすると試験勉強をしていても台詞のほうに頭が引っ張られてしまうんです。無意識に問題を解いていると台詞が浮かんできて、どういうふうに演技しようとか考えてしまって。だからそういうときはもう、やらないです。スパッとやめる。ドラマがない期間に人よりも多めにやろうと決めて、試験の前に本業がどういう状況になっているかはわからないので、前倒しで早めに進めるよう調整していました。

――自分のスタイルを見極めて勉強方法を確立されていたんですね。
【田中道子】振り返ってみると、もともと嫌いじゃなかったのかなと思います。8年ぶりの勉強で、二級のときよりも大幅に知識が必要で、この問題を解ける日がくるのかなってくらい難しい計算問題があったのですが、計算問題は全部捨てようって思っていたくらい。でも解けるようになるとやっぱり楽しくて、結果的に学科試験の計算問題では満点を取れました。泣きながら悩んでストレスが溜まっても、解けるとうれしさが倍になって返ってくるので今思えば楽しかったですね。

――途中で「あきらめよう」と思ったことはありましたか?
【田中道子】一次試験のときはなかったです。ただ、一次試験でも二次試験でも落ちたらやめようと思っていました。犠牲にするものが大きすぎるので、もう1年は難しいかなって。まず健康問題、自炊する時間はすべて勉強しようと思っていたので、基本的にコンビニ食を片手に勉強していました。外食するのも時間がもったいなかったので。どうしても偏った食事になるので体にはあまりよくないですよね、体力も落ちるし。あとは友達からのお誘いもすべて断っていて、プライベートでは縁が切れた人のほうが多いくらいです。

――それらを犠牲にするくらい本気だったということですね。
【田中道子】そうですね、ただ本当に仲の良い人たちは「試験が終わったらご飯に行こうね」と言ってくれたので、逆に電話帳がスッキリしました(笑)。そんな感じだったので、もう1年やるのはちょっと無理だなと思って「今年決める」という気持ちでした。

食事やプライベートを犠牲にして掴んだ一発合格。「逆に電話帳がスッキリしました(笑)」とポジティブに語っていた
食事やプライベートを犠牲にして掴んだ一発合格。「逆に電話帳がスッキリしました(笑)」とポジティブに語っていた【撮影=阿部昌也】


――それで本当に合格するというのは、すごいですね。
【田中道子】いやぁ……奇跡ですね。二次試験は特に奇跡だと思っていて、図面を描きながらどうしても“あっちを建てればこっちが建たず”みたいになってくるんです。どっちを妥協するか判断しないといけない、この判断がすごくストレスが溜まるので極限状態で選択していくのですが、その選択のスピードも大事ですし、選択肢の中にアウトとセーフがあって奇跡的にセーフを引いていただけだと思っています。いつアウトを引いてもおかしくなかった。私は運が味方したなと思っています。

――では、資格をいかして今後やってみたいことはありますか?
【田中道子】大学で学んだ都市デザインの中で、“建築と教育のつながり”といった内容があり、先進国や教育が充実しているところは建築も面白いんですよ。子どもの発想を生かすような、同じような建物が続いているというよりはすべてに遊び心があるみたいな。そのつながりの勉強をしていくうちに子どもの教育に関わる施設に一番魅力を感じるようになり、今後の日本をつくっていくなかでもそこが重要になるのではないかと思っています。

――確かに、日本の教育施設などは画一的な建物が多い気がします。
【田中道子】当時、勉強していたのが例えば発展途上国の教育施設では色を塗るのは後回し、素材の色そのままで、実用性重視だったりするのですが、教育が行き届いているヨーロッパ圏ではわりと遊びを入れた建築になっているんです。教育と建築は密接に関わっていると個人的にも思っていて、日本は特に地震などもあって統一されやすいところもあるので、いつか、ちょっと面白い建築物を建てられたらいいなと思っています。

“建築と教育のつながり”に魅力を感じているという田中さん。「いつか、ちょっと面白い建築物を建てられたらいいなと思っています。」
“建築と教育のつながり”に魅力を感じているという田中さん。「いつか、ちょっと面白い建築物を建てられたらいいなと思っています。」【撮影=阿部昌也】


#ひときわやくにたつ
・周りに宣言することで、自分を奮い立たせる
・集中できないときはスパッとやめて、できるタイミングで多めにやるなど調整する
・「これがダメだったらやめる」というゴールを決めて全力で集中する

取材=浅野祐介、文=山本晴菜、撮影=阿部昌也

田中道子(https://www.oscarpro.co.jp/talent/michiko_tanaka/profile.html)
2013年「Miss World Japan 2013」で日本代表としてグランプリを受賞。2016年に俳優デビューし、テレビ朝日ドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」4代目秘書・白水里果役(レギュラー)で俳優デビュー。2017年フジテレビ「貴族探偵」鑑識員・冬樹和泉役でレギュラー出演。2022年、テレビ朝日ドラマ「六本木クラス」に理沙ガルシア役で出演。また、舞台「赤羽焼肉劇場」で主演デビュー。

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