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「え?本物にしかみえない」目の前に見える北海道赤れんが庁舎は実は印刷物だった!?その仕掛けに迫る!

2023/02/21 10:00
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老朽化のため、2022年より大規模改修が行われている北海道庁の「赤れんが庁舎」。工事中にもかかわらず、庁舎の写真が印刷されたシートで建物を覆うことで、まるで「そこに赤れんが庁舎がある」かのように見えるという画期的な取り組みを実施している。「素敵なアイデア」「実物と勘違いしそうなクオリティ」など、地元民だけでなく旅行者の間やSNSでも話題になっている。

赤れんが庁舎北面の転写シート。まさに「本物のよう」な出来映えに驚く
赤れんが庁舎北面の転写シート。まさに「本物のよう」な出来映えに驚く【写真提供=北海道建設部建築局建築整備課】


1968年以来!北海道の人気スポット「赤れんが庁舎」が大改修

1888年(明治21年)に建てられた、北海道庁の旧本庁舎である「赤れんが庁舎」。火災に見舞われた過去(1909年)がありながらも、明治時代の希少な建築物としてその姿を残してきた。1969年(昭和44年)には国の重要文化財に指定されるなど、北海道に残る貴重な歴史的建造物であることから、今もなお人気の観光スポットだ。

【写真】改修前の赤れんが庁舎。明治時代の雰囲気を残す西洋建築として訪れる観光客も多い
【写真】改修前の赤れんが庁舎。明治時代の雰囲気を残す西洋建築として訪れる観光客も多い【写真提供=北海道建設部建築局建築整備課】

1968年(昭和43年)に行われた復原工事から50年以上が経過し老朽化が進んだため、2022年から耐震改修を含めた大規模改修を実施。通常、工事中は足場などで周囲が覆われるため建物が見えない状態になるのだが、今回の改修にあたっては、庁舎が印刷されたシートで現場を覆うことにしたのだそう。

そこで、今回の改修にあたり庁舎を印刷したシートを利用することにした経緯、その制作秘話などについて、北海道建設部建築局建築整備課の担当者に話を聞いた。

時計台などの前例を参考に「工事中でも庁舎の雰囲気を味わってほしい」と企画

ーー改修中の現場を実物大庁舎のシートで覆うことになったきっかけを教えてください。

赤れんが庁舎東面に転写シートを付けている途中の様子
赤れんが庁舎東面に転写シートを付けている途中の様子【写真提供=北海道建設部建築局建築整備課】

【担当者】重要文化財建造物の保存修理工事では、工事中の建物を雨や風から保護する「素屋根」を設置するケースがあり、その際に工事期間中の周辺の景観や観光客に配慮するため転写シートを設置している事例がありました。具体的には、同じ北海道内では札幌市時計台、東京都では浅草寺雷門、兵庫県では姫路城などです。赤れんが庁舎改修工事においても、同様の取り組みを行いたいと考えました。

そこで工事発注の際に、「素屋根」の外壁のシート張りについて、周辺の景観に配慮するよう技術提案を求めました。すると、受注者コンソーシアム(代表企業:株式会社竹中工務店、構成企業:株式会社久米設計、岩田地崎建設株式会社)から「実物大である赤れんが庁舎の写真を印刷した転写シートを設置したい」との提案があったのです。

ーー転写シートを設置することは、通常より手間も費用もかかるかと思います。内部で企画した際に反対の声などはなかったのでしょうか?
【担当者】赤れんが庁舎は年間約70万人が訪れていた観光拠点だったため、工事中の景観に配慮することについて、内部から反対などはありませんでした。

ーー企画を実現するために苦労した点はありますか?
【担当者】苦労した点は主にシート制作で、2つありました。ひとつは、赤れんがを見上げず、遠く離れた場所からも違和感なく見えるよう撮影したことです。赤れんが庁舎は、周辺数ブロック離れた場所からも見えるため、通常の建築撮影で使用する広角レンズは使わず、赤れんがを見上げずに正対して見えるように、なるべく離れた場所に高さ5.4mの足場を組んで立面を撮影しました。

赤れんが庁舎東面の転写シートの施工がほぼ完成した様子
赤れんが庁舎東面の転写シートの施工がほぼ完成した様子【写真提供=北海道建設部建築局建築整備課】

【担当者】もうひとつは、屋根の残雪や周辺の樹木を避けて撮影をしたことです。撮影は2022年3月中旬~4月中旬の人のいない早朝に雪解けを待って3回行いました。天候や屋根に雪が残っているなど、撮影のタイミングにも苦労しました。赤れんが庁舎周囲には大きな樹木もあることから、さまざまな距離や方向から撮影した写真を組み合わせた画像となっています。

ーー巨大な写真プリントは、どのように作られているのか、教えてください。
【担当者】シートは、巨大なインクジェットプリンターによって印刷されています。小さな穴の開いた1枚1.82X5.17mの大きさの防炎性能適合のポリ塩化ビニル製のメッシュシートに、巾2.5mまで印刷できる大型のインクジェットで作成しました。印刷したシートの総枚数は624枚です。

転写シートのサンプル。これをもとに確認し、最終的な色を決めていったという
転写シートのサンプル。これをもとに確認し、最終的な色を決めていったという【写真提供=北海道建設部建築局建築整備課】


【担当者】(より実物に近づけるように)煉瓦や銅板、棟飾りなどの部分的に印刷したサンプルで色をみんなで確認し、最終的な色を決定しました。

ーーシートの完成、施工まではどれくらいの期間を要しましたか?

こちらは、北面に転写シートを付けている途中の様子
こちらは、北面に転写シートを付けている途中の様子【写真提供=北海道建設部建築局建築整備課】

【担当者】写真撮影は先ほど述べたように2022年3~4月で実施、画像編集と色調整は4~5月、シートの割付が6~7月、製作が8~9月で、できあがったシートの施工が11月~2023年1月となります。なので、写真撮影などの準備から施工までは1年以上かかっていると思います。

ーー北海道民や観光客の反応はいかがですか?お声が届いていましたら教えてください。
【担当者】実物大の赤れんが庁舎の写真の大きさ、そして本物と見間違える精巧さに、驚きの声とともに工事期間中の今しか見られない貴重な風景だと大変好評をいただいています。

赤れんが庁舎北面の転写シートが完成
赤れんが庁舎北面の転写シートが完成【写真提供=北海道建設部建築局建築整備課】


改修工事は、2年後の2025年2月ごろに完了予定とのこと。シートに覆われた精巧な仮の姿は今だけの“期間限定の風景”ということで貴重だが、四季折々の景色に赤く映える実物がお目見えする日も待ち遠しい。

取材・文=矢野 凪紗

■北海道庁 旧本庁舎(赤れんが庁舎)改修事業について
https://www.pref.hokkaido.lg.jp/kn/ksb/akarenga.html

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