「フィクションを織り交ぜおもしろく」。会社の歴史やストーリーを漫画で制作する「社史漫画.com」って知ってる?

2023/02/24 15:00
SHARE

社史を漫画で制作する専門サービス「社史漫画.com」が2022年12月にスタートした。企画からシナリオ制作、漫画制作、製本までを一貫して担い、作画は、著名な漫画家や広告を専門とする漫画家などから、予算とスケジュールに合わせて提案する。運営するのは、漫画コンテンツ制作を行う株式会社ジガー。代表取締役の高澤邦彦さんに、サービス誕生のきっかけや、社史を漫画で作ることのメリットを聞いた。

フィクションを取り入れることも。「本当に伝えたいメッセージを届けられれば成功」

株式会社ジガーが手がけた、株式会社ビームス・デザイン・コンサルタントの社史「天下統一」
株式会社ジガーが手がけた、株式会社ビームス・デザイン・コンサルタントの社史「天下統一」

――「社史漫画.com」誕生の背景を教えてください。
【高澤邦彦】お客さまから「社史を漫画で作りたい」という依頼を受けたのがきっかけです。創業した社長が突然倒れてしまい、その社長との思い出をまとめるのに、漫画のほうが伝わりやすいのではないかということで、ご相談をいただきました。

【高澤邦彦】社史コレクションが有名な神奈川県立川崎図書館には、約2万冊の社史が所蔵されています。しかしその中で漫画の社史はたったの10冊か20冊ほど。そこで、アンケート調査を実施したところ、20〜49歳の4割以上が「(自社、他社問わず)社史を漫画で読みたい」と回答しました。そのギャップを知り、読みやすい漫画の社史をご提案していきたいと考えました。

株式会社ビームス・デザイン・コンサルタントの社史「天下統一」
株式会社ビームス・デザイン・コンサルタントの社史「天下統一」

――読みやすいという以外にも、漫画で制作するメリットはあるのでしょうか?
【高澤邦彦】伝えたいメッセージを、よりリアルに伝えられるところですね。だから依頼を受けたら、まずは誰に向けて制作するのかを確認します。例えば、取引先に向けて作るのなら、「どれだけ真面目な会社かというところにフォーカスしましょう」とか、創業者のためであれば「創業者の成長が会社の成長そのもので、一代記みたいな感じでまとめましょう」というような感じで提案します。

――創業当時の話は、歴史が長いほど知る機会が少ないですよね。
【高澤邦彦】コロナ禍前は、面倒に感じながらも先輩や上司に引っ張られて食事にいくうちに、若い社員も社風みたいなものを感じられたと思うんです。でも、コロナ禍でそういうことがさらに減って、若い世代は社風を感じにくくなっている。そんな中で、若手社員や未来の社員に向けて作るとしたら、創業者のスピリットや、安定した企業になるまでの苦労を伝えて、「これに甘んじることなく成長を続けてくれよ」というふうにまとめるとか。そういうストーリーを知るのと知らないのとでは、仕事に対しての責任感も変わるのではないでしょうか。

――社史漫画では、フィクションを取り入れることもあるのですよね。
【高澤邦彦】いくら漫画でも、つまらないものは読むのが苦痛になってしまいます。場合によっては、冒頭で「この社史は事実にもとづいたフィクションです」とクレジットを入れておき、「本当に伝えたいメッセージが少しでも届けられれば成功」と割り切ることもおすすめしています。

ネクタイの色まで再現。依頼主が自慢したいと思うものを作る

制作風景
制作風景

――特に大変な作業は何ですか?
【高澤邦彦】漫画の場合は、服装や場所といったディテールを書き込む必要があります。社長から大切な言葉をかけられたというシーンなら、どの飲食店で、社長はどんな服装だったか、誰が同席して、席順はどうだったか、何を食べたか……というところまで取材します。そうしないと依頼主は、自分の記憶と違うので、違和感を覚えてしまう。大変な作業ですが、それができれば、「そう、こうだったんだよ!」と話した人の記憶が蘇り、すごく喜んでいただけます。

【高澤邦彦】最初にお話をした、社長が倒れてしまった会社のときは、絵を見せると「社長はこの色のネクタイをしません。いつもコーポレートカラーである紺色のネクタイをしていましたから」と言われました。細かいことですが、そういうところが彼らにとってのリアリティなのです。社長との思い出を残したいという思いがあって、とにかくそれに応えたいと思いました。制作中に社長は亡くなられてしまったのですが、完成した社史を社長のご家族が読んで、「子どもたちが大きくなったら、あらためて読ませたい」というメッセージをいただきました。いい仕事ができたと思いましたね。

【高澤邦彦】クリエイティブなものって、評価が漠然としている部分がある。でも、いいものは、やっぱり人に自慢したくなる。発注者が自慢したい、誰かに伝えたいと思ってもらえるかどうかを基準のひとつにしています。

――「社史漫画.com」の今後の展望を教えてください。
【高澤邦彦】ただ沿革が並ぶ社史に比べて、リアリティを感じやすいのが社史漫画のよさだと思っています。社史漫画を通じて会社の創業当時の様子や、すったもんだしたストーリーを知ることで、ひとりでも多くの人が、自分の人生を懸けた会社人生に、意義を見つけてもらいたいと願っています。

この記事のひときわ#やくにたつ
・誰に対して、どう感じてほしいのか目的を明確にする
・ディテールにまでとことんこだわりを持つ
・仕事に対して自分なりの評価基準を持つ

取材・文=伊藤めぐみ

■社史漫画.comhttps://shashi-manga.com/
■株式会社ジガーhttps://jigger.jp/

あわせて読みたい

人気ランキング

お知らせ