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高級価格帯の冷凍食品が売れる理由は?松屋銀座の商品開発の今後を深堀り取材!【後編】

2023/02/20 10:00 | 更新 2023/04/16 21:54
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昨年(2022年)8月31日に東京・松屋銀座の地下にオープンした、冷凍食品専門の売り場「GINZA FROZEN GOURMET (ギンザ フローズン グルメ)」。平均価格が2000〜3000円台の高級路線の冷凍食品売り場で、その年の世相を反映した食を選ぶ「今年の一皿」で2022年12月に「冷凍グルメ」が選ばれるなど、昨今の冷凍食品人気が追い風となり、いま注目を浴びている。

前編では、株式会社松屋 食品部食品1課長の今井克俊さんにオープンにいたるまでの経緯などについて聞いた。今回の後編では、開発秘話や高級価格帯でも売れ続ける、GINZA FROZEN GOURMETならではの魅力とプレミア感、今後の商品展開などについて、掘り下げて話を伺っていく。

銀座 吉澤「松阪牛 シルクハンバーグステーキ」1383円
銀座 吉澤「松阪牛 シルクハンバーグステーキ」1383円【写真提供=株式会社松屋】

手探り状態でスタートした冷凍食品の開発秘話

株式会社松屋 食品部食品食品1課長の今井克俊さん
株式会社松屋 食品部食品食品1課長の今井克俊さん【写真提供=株式会社松屋】

ーーお店側からはどんな提案やアイデアがありましたか?
【今井克俊】レストランのメイン商品やこういうのを商品化したいなどお店側から希望はあったので、お互い話をしながらメニューを選考しました。冷凍食品って、レンジでチンしたり湯煎でボイルするだけのイメージが強いですよね。簡単に調理できるのが一番の魅力であると思いますが、GINZA FROZEN GOURMETには、ひと手間もふた手間もかかるような商品がなかにはあるんです。例えば、ひとつの商品でこの食材はボイルして、こっちはトースターで温めて、それぞれを合体させるとか。パッケージに細かく作り方が書いてありますが、一般的な冷凍食品よりは手間がかかるものが多いです。お客様のニーズとしては簡単なほうが喜ばれますが、これは作り手の皆さんのこだわりなんですよ。冷凍食品でお店の味を再現したいという強い想いがあるので、ちょっとだけ手間をかけていただく調理方法も特徴のひとつとなっています。

ーー開発するうえで心がけていることはありますか?
【今井克俊】やはり、各レストランのブランドや味を傷つけてしまうような商品は作りたくないんです。冷凍食品って、家庭の電子レンジでチンすると、温めすぎたりして意外と失敗することが多いと思うんです。それで「冷凍はおいしくないよね」と思われてしまうと、我々としては困ります。3000、4000円もする冷凍食品を販売しているので、それだけは避けたい。冷凍食品を食べて味を知ってもらい、お店でも食べていただくという循環も考えているので、お店にも影響が出てしまいます。そういうことにならないように、百貨店ならではの丁寧な接客で、作り方を念入りにお伝えするように心がけています。冷凍食品だけが売れればいいという考えではないので、その辺を十分理解しながらうまく循環させていきたいです。

銀座 日東コーナー 1948「ロールキャベツ トマトソース」1998円
銀座 日東コーナー 1948「ロールキャベツ トマトソース」1998円【写真提供=株式会社松屋】


ーー冷凍する機械はどうされているのですか?
【今井克俊】冷凍食品は、松屋オリジナルで作ることが目的ではないので、基本的にはお店に冷凍機を購入していただくスタンスです。冷凍機がないところは購入していただいたり、冷凍工場を紹介して冷凍だけするというパターンもあります。その他にも衛生面の検査、食材によって適した機種や冷凍方法など特徴があるので、今どこのメーカーがいいとか情報を提供してフォローさせていただいています。コロナは落ち着いてきましたが、それでもまだ飲食店の稼働率は100%に戻ってはいません。例えば稼働率が70%で残りの30%をどうするか?人員削減はできないので冷凍食品に活路を見出したいけれど、売り場がない。そういう飲食店にも松屋銀座のプラットフォームが役にたつと考えています。ECサイトも自社だけでやるのも大変なのでぜひ活用していただきたいと思っています。

ーー売り場の横に、何種類も保冷バックが並んでいますが、どういった理由でバリエーションを増やしたのでしょうか?
【今井克俊】保冷バッグに関しては、冷凍食品売り場を作る前に勉強させていただきました。冷凍食品には、生産から輸送・消費まで一貫して低温に保つ「コールドチェーン」という仕組みがありまして、マイナス18度以下をいかに維持できるかが大切なのです。つまり、作る場所の温度、輸送時の温度、販売時の温度、それとお客様に持って帰っていただくときの温度、家庭の冷凍庫の温度、これらすべてが低温で保たれていないとおいしさが再現できないと、冷凍の専門家の方から教えてもらいました。冷凍食品で一番最悪な状態は、溶けたものを再冷凍することだそうです。そこで、必ず冷凍状態を保って持って帰っていただくため、保冷バッグにも注目しました。簡易的なものから機能性と剛性を兼ね備えたものまで、バリエーションがそろっています。デザインが豊富にあったほうがお客様に楽しんでいただけますし、購入時にはドライアイスを必ずつけて販売するためどうしても重くなるので剛性も必要なんですね。お客様には、おいしく冷凍食品を味わっていただくために、作り方も大事ですが保冷温度についても気をつけてほしいですね。

オープンから半年、その後の売り上げやお客様の反応、そして将来の計画

地下2階にある「GINZA FROZEN GOURMET (ギンザ フローズン グルメ)」の販売コーナー。高級感ある冷凍庫が目印
地下2階にある「GINZA FROZEN GOURMET (ギンザ フローズン グルメ)」の販売コーナー。高級感ある冷凍庫が目印【写真提供=株式会社松屋】

ーーオープンから半年立ちまして、その売上状況っていうのはいかがでしょうか?
【今井克俊】オープン時に、かなり多くのマスコミの皆さんに取り上げていただきまして、年末にかけてかなり売り上げが伸びました。目標はほぼ達成でき、我々の予測よりおよそ2割上回っています。これに甘んずることなくさまざまな商品をお客様のもとへお届けしたいと考え、春に向けて商品開発をしているところです。

ーーそれは、どんな商品を予定されていますか?
【今井克俊】今、売り上げの約6、7割は洋惣菜なんですね。これは、オープン前に競合他社の売り場をリサーチして、洋惣菜が一番売れると判断したからなんです。ただ、お客様の声で「和惣菜がもうちょっと欲しい」という要望もありますので、全国各地の高級料亭さんなどと話をしています。さらに、松屋は浅草にも店舗があり下町の老舗ともお付き合いしています。そこで、“The 下町”の冷凍食品も開発できればと考えています。銀座と浅草という、街の特性を生かしたラインナップを準備しています。

ーー今後の取り組みについて、どんなことを考えていらっしゃいますか?
【今井克俊】さまざまなところからオファーをいただいたので、将来的には松屋銀座だけでなく地方の百貨店や高級スーパーに、GINZA FROZEN GOURMETのコーナーを設置して展開していければと考えています。ネットでも銀座と浅草の味は全国に届けられますが、それをリアル店舗で展開できるのが理想的ですね。

ーー商品に関するお客様の声や反応はいかがですか?
【今井克俊】味に関しては、すごく喜んでいただいておりまして、リピーターのお客様に数多く来ていただいています。しかも、「自分で食べてよかったから実家にも送りたい」「孫に贈りたい」「知人にプレゼントしたい」などと、百貨店の冷凍食品ならではのギフト用として購入される方も多いですね。結婚の内祝いなどにも利用していただけて大変ありがたいなと思っています。ちょっとお値段はしますが、贈り先でも銀座の名店の味が楽しめると大変好評です。しかし、たくさん買われたお客様から「箱がちょっと邪魔だわ」という意見もいただきました。家庭用の冷蔵庫の大きさって、業務用と違いそこまで大きくないんです。箱には作り方が記してあるためそれなりのスペースは必要なのですが、形状や大きさなどのバランスは取っていかなければと考えています。

銀座 みかわや「舌平目かに肉包揚げ」3456円
銀座 みかわや「舌平目かに肉包揚げ」3456円【写真提供=株式会社松屋】


ーー自宅なのに銀座のレストランにいるような気分になりますから、誰かに贈りたくなるのも頷けます。そんな素晴らしいメニューを調理しているシェフから、苦労話など聞いていますか?
【今井克俊】そうですね。それがないと、なかなかあのお値段を出すのは勇気がいりますよね。そのため、各お店のシェフの皆さんには、「最終的に家庭でボイル、もしくは焼いて調理することが最終工程になるので、逆算して作ってください」と伝えています。家庭で少し火入れをしていただくので、ちょっと水分を多めに残したり、細かい部分まですごく考慮して作っていただいています。ただ単にでき上がったメニューを急速冷凍するだけじゃないんですよね。一見、お店のメニューと同じようですけれど、最後の工程をちょっと変更しているので、その部分での苦労話は耳にします。ボイルして温めると硬くなって食感が変わってしまうので、油の量を調整したり、微調整がすごく難しいらしいです。

ーー読者に向けて伝えておきたいことはありますか?
【今井克俊】冷凍食品はトレンドではないと思ってます。おいしく食べていただくために、我々と飲食店さん、それに大手メーカーさんも革命的な調理方法や技術を探して研究しています。我々もお客様と飲食店の期待を裏切らないようにおいしいものを作り認知度をもっと高めていけば、飲食店の働き方改革にもつながりますし、店を維持していく助けにもなると考えています。あと、繰り返しになりますが、冷凍食品は適当にチンしてもおいしくありません。せっかくシェフが手間暇かけて作り上げたメニューなので、作り方は必ず守ってください。そうすることで、ご家庭で本格的な銀座の味を楽しんでいただけます。

――ありがとうございました。

取材後、実食レポート!実際に調理をしてみた

ふんわり柔らかな「ロールキャベツ トマトソース」は銀座の味そのもの!

今井さんへのインタビュー後、GINZA FROZEN GOURMETにて、人気第2位の「ロールキャベツ トマトソース」を購入。自宅で実際に調理してみることに。
まずは、高級感漂う箱を開けると、冷凍された真空パックが3つ登場。ロールキャベツと温野菜、トマトソースがそれぞれ個別にパックされている。

調理方法が異なる具材ごとに真空パックされている。箱の裏の作り方どおり調理すると、自宅で銀座の名店味が楽しめる
調理方法が異なる具材ごとに真空パックされている。箱の裏の作り方どおり調理すると、自宅で銀座の名店味が楽しめる【撮影=北村康行】


作り方はすべてボイルとなっているが、ロールキャベツが15分、温野菜とトマトソースが5分と温める時間に差が。これが今井さんが言っていた、ひと手間ふた手間かける調理ということだ。温め時間などの作り方は箱の裏側にしっかりと記されているので、迷うことなく調理ができてとても簡単。

箸でも切れるほど柔らかいロールキャベツ。ふっくら仕上がっていて、レストランと寸分違わない味わいが楽しめた
箸でも切れるほど柔らかいロールキャベツ。ふっくら仕上がっていて、レストランと寸分違わない味わいが楽しめた【撮影=北村康行】


調理開始から20分弱でテーブルの上にロールキャベツが並び、人気店の高級感あふれるトマトソースの香りがふわっと広がった。ロールキャベツにナイフがすっと沈み込むように入り、口に入れる前から柔らかさを実感。肉の旨みとキャベツの甘み、トマトソースのコクが絡み合い、ジューシーでふんわりした味わいだ。いつものテーブルで銀座のシェフの味が楽しめるとあり、自宅で過ごすプチ贅沢なひと時にもおすすめだ。

この記事のひときわ#やくにたつ
・簡単に調理できるのがメリットの冷凍食品を逆手に取り、「手間をかける」ことを特徴として付加価値を付ける
・地域の特性を生かしたブランド展開をする
・客からのリアルボイスを形にする

取材・文=北村康行

株式会社 松屋 食品部食品1課長
今井克俊
1994年入社。入社5年目より24年間食品売り場に関わる食のプロフェッショナル。2021年より冷凍食品の専任課長に就任した

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