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税理士の田淵宏明さんが解説!迫りくる増税……。「防衛費増税」で、私たちはどんな影響を受けるのか

2023/02/22 09:30
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政府が掲げる防衛費増額の財源として、「たばこ税」「復興特別所得税」「法人税」があてられることに。「増税」ゆえ、多くの人にあまり好ましくない影響があることはイメージできるものの、具体的にどんな影響を受けるのか。YouTubeで「税理士YouTuber ヒロ☆税理士」として人気を集め、2月20日には新刊『なんで私の給料からイロイロ引かれるの? 税金弱者サラリーマンのお金の取り戻し方』(KADOKAWA)を上梓した税理士の田淵宏明先生が詳しく解説してくれた。

税理士の田淵宏明さん
税理士の田淵宏明さん


復興特別所得税増税にある「からくり」

――ニュースでも「増税増税」のオンパレードですが、まずはどんな増税があるのかを教えてください。
【田淵宏明】これは2022年末に発表された令和5年度税制改正大綱に記載された内容であり、まだ確定したものではありませんので、あくまでも現状でのお話をします。防衛費増額に伴う財源にあてるのは、「たばこ税」「復興特別所得税」「法人税」の3本柱であり、増税時期は2024年以降と見られています。「復興特別所得税」の代わりに「酒税」を上げるという話も出ているようですが、まだ正確にはわかりません。たばこ税については、主に加熱式たばこについて段階的に1本あたり3円程度の増税となるようです。喫煙者の人にとっては痛い増税ですが、非喫煙者にとっては影響がないものでしょう。

【田淵宏明】一方、復興特別所得税については所得税の付加税ですから、なんらかの所得があるすべての人に影響が及ぶものです。復興特別所得税は、本来は東日本大震災からの復興のための財源を確保するため、所得税に2.1%を上乗せするかたちで徴収されている税金です。現在の案では、防衛費のために税率1%の新たな付加税を創設し、その代わりに復興特別所得税を1.1%に引き下げるとしています。1%+1.1%で合計は2.1%となり、現在の復興特別所得税と同じ税率となります。

【田淵宏明】ただ、そこにはいやらしいからくりがあって、実は「期間延長」されるかもしれないのです。現在の復興特別所得税は2037年に終了予定です。ただ、2051年まで14年間の期間延長がされる可能性もあるといわれています。例えば課税所得500万円の人なら14年間で約17万円の負担増となり、これは実質的な増税といえます。

復興特別所得税増税にある「からくり」
復興特別所得税増税にある「からくり」


大きな企業に勤めている人は影響を受けること必至

――1年で見れば大きな額ではないかもしれませんが、トータルで見ると痛いですね。法人税についてはどうですか?
【田淵宏明】法人税は税額に4〜4.5%を上乗せされることになるようです。ただし、法人税が500万円を超えた部分のみが対象となっています。ここから逆算すると、年間2400万円ほどの利益を出している会社が対象です。それだけの利益を出している中小企業はそう多くないので、私の感覚だと9割ほどの中小企業は対象外と考えられます。

防衛費増額に伴う財源にあてる「たばこ税」「復興特別所得税」「法人税」の3本柱
防衛費増額に伴う財源にあてる「たばこ税」「復興特別所得税」「法人税」の3本柱


――でも、残り1割の大企業に勤めている人はどうでしょう?
【田淵宏明】もちろんなんらかの影響を受けると思います。法人税が上がるのですから、会社の資金繰りに影響が及びます。法人税500万円を超える比較的大きな企業ですから給料カットまではいかないまでも、給料が上がりにくくなるということは考えられるでしょう。例えば上場企業の子会社といった、規模が中途半端な会社ではそういうこともあるかもしれません。その割に政府は企業に対して賃上げを要請しているのですから、何をしたいのかもうよくわかりませんね……(苦笑)。困ったものです。

――給料のほかにもなにか影響を受けることが考えられますか?
【田淵宏明】法人税増税とは、単純に会社の利益を削られるということです。ですから、昇給の財源のほかにも会社で使える必要経費についてもいままでより制限がかかるようになるということもあるかもしれません。

【田淵宏明】また、従業員の負担が増加することも考えられます。業績が上向いていて本来なら従業員を増やしたい状況にある会社であっても、法人税増税となるとそうはいっていられません。結果、いまいる従業員で仕事をまわすしかないということになるのです。

増税だらけだからこそ、自分で所得を増やすしかない

――そんな増税ラッシュのなか、一般の人たちはどんなことを意識する、あるいは実践すべきでしょうか。
【田淵宏明】現在の日本の状況、政府の方向性を見ている限り、減税の方向に転換するとは到底思えません。むしろ、今後もさらなる増税があると考えるのがセオリーでしょう。しかも、会社員の場合だと節税する方法も限られています。そう考えると、お金に関する勉強をしてマネーリテラシーを高め、自分自身でなんとか可処分所得を増やしていくほかありません。その手段となると、やはり副業や投資になるかと思います。

――副業も投資もブームですね。
【田淵宏明】確かに数年前から副業ブームだといわれていますが、皆さん自身や周囲の人たちはどうでしょう?ブームだといわれながらも実際に副業をしているという人はそう多くないはずです。増税によって手元に残るお金が減るのであれば、副業をして稼ぎを増やすことを考えてみましょう。

【田淵宏明】投資に関しても同様です。やはり投資ブームといわれているものの、私から見ていると投資をしている人はまだまだ少数派です。幸い、令和5年度税制改正大綱にはひとつだけいいところがあって、投資の非課税制度である「NISA」が大きく拡充されることになりました。これまでの「つみたてNISA」「一般NISA」もそれぞれいい制度でしたが、いわゆる「新NISA」にはその比ではないほどのメリットがありますから、これを機にぜひ投資を始めてほしいと思います。

――「お金に関する勉強をする」とのことですが、現状でマネーリテラシーが高くない人が勉強をするにあたってどんなことから始めるのがいいでしょうか。
【田淵宏明】いま、学習指導要領改訂によって公立校では「金融教育」が始まっています。その内容を見てみると、高校で学ぶ内容はファイナンシャルプランナーの資格勉強で学ぶようなものが多いのです。その内容とは、税制や金融商品、不動産に年金、生命保険などお金に関することを広く浅く網羅しているものです。

【田淵宏明】いま社会人になっている人は、そういった教育を受けてきていません。ですから、まずは高校生に戻ったつもりでいまの金融教育の教科書で勉強をする、あるいはファイナンシャルプランナー資格の参考書といったもので勉強をするというのがおすすめです。

この記事のひときわ#やくにたつ
・防衛費増額の財源は「たばこ税」「復興特別所得税」「法人税」
・大きな企業に勤めている人は増税の影響を受ける可能性が高い
・マネーリテラシーを高め、可処分所得を増やしていく

構成=岩川悟(合同会社スリップストリーム)、取材・文=清家茂樹

『なんで私の給料からイロイロ引かれるの?税金弱者サラリーマンのお金の取り戻し方』
KADOKAWA(2023)
田淵宏明・平岡直也 著

【プロフィール】田淵宏明(たぶち・ひろあき)
1975年5月5日生まれ、大阪府出身。ヒロ総合会計事務所代表税理士。2017年から「税理士YouTuber ヒロ☆税理士」として活動開始。登録者数は33.7万人(2023年1月現在)。ビジネスや税金に関する専門的な話をわかりやすく解説する動画コンテンツは多くのビジネスマンの支持を得ている。また、YouTubeの収益化を戦略的に実践し、直近では月100万円前後をコンスタントに稼ぐ。著書に『YouTube副業で月10万円を稼ぐ』(SBクリエイティブ)、『日本一わかりやすい ひとり社長の節税』(ぱる出版)がある。

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