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金属加工の町工場から生まれた「ひこうきやさい」。“工業×農業”の新たなビジネスモデルで社会課題解決に一手

2023/01/09 11:00 | 更新 2023/04/16 23:22
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航空機などの精密部品加工を行う岐阜県の町工場・大堀研磨工業所が、ものづくりの世界で培ったノウハウを生かし、雇用創出のための取り組みとしてスタートした野菜ブランド、「ひこうきやさい」。航空機産業に携わっていることから「ひこうきやさい」と名付けられた同ブランドは、“工業×農業=農工業”の新たなビジネスモデルとして注目を集めている。

クリーンルーム内での水耕栽培を採用することで、気候や天候などに左右されない安定的な生産が可能に。加えて、安全性の高い食品づくりを実現し、高齢者や障がい者といった働きたくても働けない人々の雇用機会を生むなど、さまざまな側面から見て実効性のある取り組みを、地方のとある町工場が推進しているというのは驚くべきことだろう。ここでは、事業立ち上げの背景や今後の展望などについて、大堀研磨工業所の金岡さんに話を聞いた。

高齢者や障がい者の雇用創出を目的に誕生した野菜ブランド「ひこうきやさい」
高齢者や障がい者の雇用創出を目的に誕生した野菜ブランド「ひこうきやさい」

働く意欲を発揮できる場を作りたい。ものづくりの知見を生かして、新規事業立ち上げへ

航空機や人工衛星、F1といった精密な金属加工技術を求められる分野で高い専門性を発揮し、50年以上に渡ってものづくりに携わってきた、有限会社大堀研磨工業所。金属加工業において一流の技術と豊富な経験を持つ同社が、高齢者や障がい者、女性の雇用を促進する場として目を付けたのは、農業分野だった。

「『ひこうきやさい』の事業は、体力的・年齢的に、本業である金属加工業で継続して働くことが難しくなったシニア社員へ向けて、セカンドライフの場を提供することを目的に2016年6月よりスタートしました。1℃単位の温度管理と品質の安定が求められる精密な金属加工で培ったノウハウをクリーンルーム内の細かい環境設定や野菜の品質維持・向上に役立てています」と金岡さん。

約12種の野菜と約10種のエディブルフラワー、発芽にんにくの生産をクリーンルーム内で行っている
約12種の野菜と約10種のエディブルフラワー、発芽にんにくの生産をクリーンルーム内で行っている

安心安全な食品への関心・需要の高まりなども事業立ち上げの背景にあったそうだが、最大の目的は、年齢や性別、ハンディキャップに関わらず、働く意欲のある人々の生きがいと雇用を創出していくこと。現在、「ひこうきやさい」の事業に携わる従業員6名のうち、5名が定年退職者であるほか、障がい者の社会進出の一端を担っていきたいとの思いから、2023年4月には身体に障がいを抱える方を新卒で採用予定だという。

「ひこうきやさい」を全国へ。雇用促進のために、増産と販路拡大を目指す

「ひこうきやさい」では現在、ベビーリーフやマイクロリーフ、エディブルフラワー、発芽にんにくなどを栽培し、種まきから収穫、パッキングまでの全工程をクリーンルーム内で完結させることで、鮮度保持と安定生産を両立させている。その品質の高さが評価され、今でこそ岐阜・愛知県内のホテルやミシュランガイド掲載の著名なレストランなど、多くの飲食店から利用されているが、事業を始めた当初は困難も多かったという。

「ひこうきやさい」の生産には、2022年12月時点で5名の定年退職者が従事している
「ひこうきやさい」の生産には、2022年12月時点で5名の定年退職者が従事している

「農業については全くの素人で、専門家の指導なども入れずにスタートしたため、単純に作物を育てるということがとても難しかったです。“種をまけばできる”と思われがちな水耕栽培ですが、失敗も多く、生き物相手ではなかなかうまくいきませんでしたね。小さな栽培モジュールで、実験とリサーチを繰り返しました」と金岡さんは当時を振り返る。

水耕栽培は露地栽培とは異なり、温度設定といった栽培環境の変更が容易に行えるため、天候や季節に左右されない環境を生かして多くの試験サイクルを回し、品質向上にも積極的に取り組んでいるそうだ。

「今後は、生産量を倍近くに増産できるよう計画をしており、それに伴い、売上の増加を目指しています。現状の売上は決して満足いくものとは言えず、雇用を促進し社会に貢献していくためにも、まずはある程度の売上を確立させなければと考えています。そのためにも、岐阜・愛知の顧客が9割を占める現状から関東・関西圏への進出、販路の拡大を目指し、私たちの商品を全国へお届けできるよう頑張っていきたいです」(金岡さん)

現在は岐阜・愛知の飲食店からのオーダーが中心。今後は全国への販路拡大を目指す
現在は岐阜・愛知の飲食店からのオーダーが中心。今後は全国への販路拡大を目指す

既存事業で培った知見を別の分野に転用し、新たなビジネスモデルとして構築した「ひこうきやさい」は、社会課題解決につながる、さまざまな可能性を感じさせてくれる。現在は、食べチョクやポケットマルシェといった産直通販サイトでも販売を行っているので、購買を通じて本事業を支援してみてはいかがだろう。

この記事のひときわ#やくにたつ
・身近な課題に目を向ける
・磨き上げた自社の強みは、異なる分野でも生きる
・成し遂げたいことを明確にする

■「ひこうきやさい」紹介ページ
https://www.ohorikenma.co.jp/yasai_top.html
■「ひこうきやさい」Instagram
https://www.instagram.com/hikoukiyasai/?hl=ja
■「ひこうきやさい」販売サイト一覧
https://lit.link/hikoukiyasai

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