円安による生活コストの上昇や、老後資金問題など、お金に関する漠然とした不安を抱えている人も多いはず。一方で、これまでにも「お金を貯めたい」と考えてきたにもかかわらず、なかなかうまくいかないという人も少なくないだろう。ここでは、『年収300万円でもラクラク越えられる「貯蓄1000万円の壁」』の著者でもあるファイナンシャルプランナーの飯村久美さんが、お金を増やすコツを伝授。

ここからは、具体的にお金を増やしていく方法について解説していくことにしましょう。
お金を増やすには、「稼ぐ力」「貯める力」「増やす力」という3つの力を身に付けることが必要不可欠です。あなたは、どの力を高めることを意識しますか?貯蓄1000万円という目標を達成するなら、まず、運用するためのお金(貯蓄にまわせるお金)をつくるところからがセオリーです。
そうなると、家計に入ってくるお金を増やす「稼ぐ力」を付けるか、家計から出ていくお金を減らす「貯める力」を付けるかになりますが、ここでは、すぐに取りかかれる「貯める力」について考えていきます。
会社でいえば、これは経費削減にあたるものです。といっても、単に切り詰めるというよりは、外に出ていっているお金を見直して無駄な支出を減らすということです。無駄がなくなれば、それだけ会社に利益が残るようになります。
いままで貯蓄のできなかった人が25年で1000万円を貯めるなら、月に約3.3万円の収支を改善する必要があります。1日1100円の支出を削減できれば、それだけで毎月の目標が達成できます。家計から出ていくお金を減らす、つまり、無駄な支出を減らすなら、あれこれ手を尽くす前にやるべきことがあります。
それは、お金の大切さを実感することです。「お金が大切なのはあたりまえだよ」という声が聞こえてきそうですが、あなたは自分が働いて稼いだお金を現金で手にしたことがありますか?
毎月の手取り金額が20万円だとするならば、その紙幣の束はどれくらいの厚さなのか、重さはどれくらいなのかわかりますか?また、触り心地や匂いをちゃんと感じたことはありますか?
経験したことのない人がほとんどかもしれません。一度でいいので、給料日に銀行に行って全額現金で下ろして手にしてみてください。お金のありがたみを実感できるだけで、お金の使い方が変わります。
それこそ最近は、現金を持つことさえ少なくなってきました。クレジットカードやデビットカード、交通系や流通系の電子マネー、そして、QRコードやバーコードを利用するスマートフォンの決済アプリなどを使えば、現金を持たなくても支払いができます。
クレジットカードや電子マネーは、スマートフォンに登録することもできるので、スマートフォン1台あれば、買い物に困ることはほとんどありません。それこそ、支払いが現金のみに限られた場所を探すほうが難しいくらいです。無駄な支出がなくならないのは、世の中に魅力的な商品やサービスがあふれているだけでなく、こうした便利なシステムにも原因があるとわたしは考えています。
以前、貯蓄をしっかりしている家庭のお話を聞いたときに、感心させられたことがありました。その家では、子どもが電車に乗るときはICカードではなく、わざわざ切符を購入して乗るというのです。電車はお金を払って乗るものだという感覚を、子どもに理解させるためだそうです。
キャッシュレス決済が日常になると、子どもの金銭感覚だって狂ってしまうでしょう。やはり、実際に現金を使って、その現金のありがたみを実感することが大切なのだと思います。
とにかくいちど、1カ月分の手取り収入を全額現金で下ろしてみてください。それだけで、お金に対する意識が変わるはずです。

この記事のひときわ#やくにたつ
・1カ月分の手取り収入を全額現金で下ろしてみる
・実際に現金を使って、その現金のありがたみを実感する
編集協力=岩川悟(合同会社スリップストリーム)、洗川俊一、横山美和、撮影=樋口涼