円安による生活コストの上昇や、老後資金問題など、お金に関する漠然とした不安を抱えている人も多いはず。一方で、これまでにも「お金を貯めたい」と考えてきたにもかかわらず、なかなかうまくいかないという人も少なくないだろう。ここでは、『年収300万円でもラクラク越えられる「貯蓄1000万円の壁」』の著者でもあるファイナンシャルプランナーの飯村久美さんが、お金を増やすコツを伝授。飯村さんは「社長になったつもりで、家のお金の管理をしましょう」と説く。今回は第1回。
社長になったつもりで、自分の家のお金を管理
今日からあなたは、あなたの家の”社長”に就任しました。社長になったつもりで、自分の家のお金を管理していきましょう。社長として最初にやるべきことは、自分の家のお金がどれくらいあるのかを知ることです。そして、その数字を客観的に見ることも欠かせません。
ここで質問です。あなたの家にはいま、どれくらいの貯蓄がありますか?この質問に対して銀行口座の残高を思い浮かべた人は、まず「貯金」と「貯蓄」の違いを知ることからはじめましょう。貯金とは、お金をそのまま貯めることです。貯金箱に500円玉や小銭を入れる、机の引き出しにこっそり隠す(へそくりなど)、銀行に預ける。お金を貯めるというと、貯金をイメージする人が多いのではないでしょうか。
一方の貯蓄とは、お金をそのまま貯めることも含めて、その他にもかたちを変えて貯めることす。かたちを変えるとは、株、債券、投資信託、貯蓄型の保険(掛け捨てではない保険)、商品券……といったものを指します。それらを実際に買ったことはなくても、誰だって聞いたことはありますよね。こうしたすべてのものをひっくるめて、「金融資産」といいます。つまり貯蓄とは、金融資産を貯めることなのです。
それでは、もういちど質問します。あなたはいま、どれくらいの貯蓄がありますか?株や投資信託などを持っていない、貯蓄型の保険にも加入していない。そういった場合であれば、銀行口座に残っているお金と自宅にある現金の合計が、あなたのいまの貯蓄になります。もし、以前買ってそのままにしてある株や投資信託などがあったり、加入した後に見直してもいない保険があったりしたら、それも加算してください。あなたが会社員なら、入社した頃にはじめた財形貯蓄や持株会の株はありませんか?もしあるのであれば、それも加算しましょう。かたちを変えたものもすべて洗い出して合計したのが、あなたのいまの貯蓄です。
さて、どのくらいありましたか?その貯蓄を1000万円にするのが、本書の目指すところです。やはり1000万円という数字はとても高い壁だと思いましたか?なかにはあまりに現実離れしていて、「目標といわれても……」「いやいや……簡単じゃないよね」と思った人もいるかもしれません。でも、大丈夫です。貯金1000万円ではなく貯蓄1000万円の壁であれば、あなたにも軽々と越えていくことができます。なぜなら、現金だけでなく、かたちを変えて貯めることで増やしていくことができるからです。
貯金100万円は、いつまで経っても100万円からほとんど増えませんが、貯蓄100万円は200万円にも、300万円にもなる可能性があります。もちろん、貯蓄1000万円を実現するのは、1年後、3年後の話ではありません。10年、20年という時間をかけて安全に増やしていくのが、長年にわたり家計の相談を受けてきたわたしが提案する”必勝法”です。このお金の増やし方さえ身に付ければ、誰にだって貯蓄1000万円を達成することができます。
お金が貯まらないのは、単にあなたがお金の増やし方を知らないだけです。お金を増やす方法はたった3つしかありません。
1.家計に入ってくるお金を増やす
2.家計から出ていくお金を減らす
3.家計にあるお金を運用する
この3つのことを考え、決断する。それが、社長としてのあなたの仕事になります。
編集協力=岩川悟(合同会社スリップストリーム)、洗川俊一、横山美和、撮影=樋口涼