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子どもの夢をかなえる“絵本の中に入れるギフト”!想いを贈り合う世界を目指す創業者の野望

2022/09/28 09:00 | 更新 2023/04/17 00:05
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ÉHON INC.創業者の國則圭太さん
ÉHON INC.創業者の國則圭太さん

“絵本の中に入る”という特別な体験ができるアバター絵本ギフトサービスで注目を集める「ÉHON INC.」。子どもとのコミュニケーションツールとして昔から愛され続けている「絵本」だが、この「絵本に入る」という新たなギフトサービスをスタートさせた國則圭太さんに話を聞いた。

――「ÉHON INC.」を立ち上げた背景について、教えてください。
【國則圭太】アッタデザインという会社で、約3年前にスタートしました。最初は、フルオーダーのオリジナル絵本ギフトサービスでした。僕自身が娘たちに読み聞かせをしているとき、毎回同じ絵本を持ってくるので飽きてきてしまい(笑)、アレンジを加えて自分の娘の名前を入れて読んだらすごく喜んだので、この子たちが登場する絵本をつくったらもっと喜ぶだろうな、と考えたのが最初の発想のきっかけです。デザイン会社なので絵本をつくる工程はイメージが湧きますが、いきなりシステム化は重たいので、まずは完全なフルオーダーで提供してみたらどうだろうかと考え、2019年11月30日(絵本の日)にリリースしました。「こういうものつくれますか?」「結婚するのでプロポーズ用につくりたい」など、いろいろなニーズがあるなかで、完全フルオーダーなので、ヒアリングしてストーリーをつくって、絵を描き起こして、製本して、デザインして、と全部を行うと10万円以上の価格になってしまうんです。それでも赤字なんですが(苦笑)。

【國則圭太】まずは、デモ的にやってみました。絵本を贈り合う文化をつくりたいという想いがあったのですが、この価格帯だと多くの人に使ってもらえないなと。もっとライトにつくれる方法はないかと考えたときに、アバターをつくり、基本的なテンプレートをカスタマイズする絵本をつくり、コストを抑える方法を考えました。そのサービスをスタートするにあたって、CAMPFIREで「アバター絵本システムをつくります」というクラウドファンディングを行ったところ、目標額の200万円を3日で達成しました。最終的には300万円、約200人が支援してくれるプロジェクトになったことで、ニーズがあり、応援してもらえるサービスだとわかり、2021年11月末に、アバター絵本ギフトサービスをベータ版としてリリースしました。このプロジェクトを進めながらになるのですが、これを文化にしたり、世の中に広めたりするには、どんなマーケティングを行い、どういった事業戦略を取らなければいけないのかを考える中で、新規事業の経験がなかったこともあり、事業構想大学院大学に入学しました。そこで2年間勉強して、検討を繰り返す中で、世の中に広めていくために「上場」をひとつの戦略として考え、2月に新しく法人を設立しました。

――大学で学んだことは大きかったですか?
【國則圭太】MBAで習うような経営学もありつつ、ビジョンを明確にしてどんな世の中をつくっていきたいか、事業構想化について学ぶ学校でした。マーケティングなどのフレームワークも学べましたが、何より、“想いの力”とか、「課題を解決する」「社会貢献をする」といった思いを強く持つことが大事で、「やり切る」「人生を賭けられる」といったマインドセット的なもの、「それがないとそもそもできないよね」という話が一番の学びになりました。「これって本当に誰かの役に立つんだっけ」「自分はどういった未来を描きたいんだっけ」といったビジョンをつくることができました。

――アイデアやきっかけもすごいですが、学び直しという行動を起こしたところがすごいですね。
【國則圭太】行動を起こせたのは、アッタデザインに相棒がいたからです。コロナ前、絵本の構想もあっていろいろと話していたときに、「学校へ行って勉強してきたらいいよ。本業の事業は自分が面倒を見るから」と背中を押してくれました。「そこまで言ってくれるなら勉強してくる」と、2年間がっつり勉強することになったので、本業にも支障が出ることは懸念としてありましたが、背中を押してもらって行動を起こすことができました。

――ありがたい存在ですね。
【國則圭太】本当に感謝しています。実は、大学の試験に受かり、通い始める直前、コロナの緊急事態宣言が出た日に、その相棒が倒れて亡くなってしまいました。正しい言い方かどうかはわかりませんが、僕の中では“弔い合戦”のような感じで、彼が残してくれた想いを続けたいということもありましたし、これで何も得られなかったら顔向けができないというか、彼の期待に応えたいという思いがありました。

ÉHON INC.創業者の國則圭太さん
ÉHON INC.創業者の國則圭太さん【撮影=樋口涼】

――國則さんが考える、絵本の魅力を教えてもらえますか。
【國則圭太】僕自身の経験ですが、仕事が忙しくて子育てに参加できている意識がなく、ママ任せだったところがあって、でも、父親として子どもと触れ合いたい。どうしたらいいか考えました。女の子だということもあって、どう触れ合ったらいいかわからないところもありました。男の子だったらボールで遊ぶとか、イメージが湧くのですが、プリンセスに興味を持っている女の子に対して、何をしてあげたらいいのか、どうコミュニケーションを取ったらいいかを考えたときに、絵本は読ませたいと思いました。漠然とですが、教育にもいいだろうし、感受性も豊かになるだろうなと。僕自身、絵本は身近な存在で、好きだったこともあって、夜の読み聞かせで寝かしつけをしたのが最初ですね。そこで「もっと読んで」といったコミュニケーションが生まれて、もう、めちゃめちゃかわいいじゃないですか(笑)。「これはわかりやすくコミュニケーションが取れるツールだな」と目をつけました。

――実体験から生まれた発想でもあるんですね。アバター絵本のアイデアについても詳しく教えていただけますか。
【國則圭太】クライアントのとあるWebサービスの中で、選択をするとおすすめアイテムが出てくるシステムをつくったことがありました。こういう仕組みがあるということは、いろいろなキーワードを選んでいくことで、自動でストーリーをつくれたり、楽にカスタマイズできる絵本がつくれるのではないかと思ったのが最初です。それはまだ、現在の仕組みとして達成できていないのですが、名入れの絵本のことは昔から知っていましたし、周りにヒアリングしてみると、子どものときに名入れの絵本をもらったことを覚えている方がたくさんいました。ただ、「登場人物が自分ではないんだよね」と口をそろえるんです。基本的に、海外のOEMの絵本が多いので、金髪の女の子が“はなこちゃん”になる、といったズレが生じている。「やっぱりキャラクターは自分じゃないと」という話になりました。当時コロナ禍でアバターという存在が注目を集めていたこともあり、頭の中にアバターという存在が浮かびました。全員アバターでゲームの中に登場したり、会議に参加したりといったことが起きているなかで、アバターを入れて本をつくればいいのではないかと思い、それが最初に考えついたアイデアです。

「ももたろう」は原作のストーリーにÉHON INC.独自の展開を加えたアレンジ作品
「ももたろう」は原作のストーリーにÉHON INC.独自の展開を加えたアレンジ作品

「シンデレラ」のイラストは、著名人を起用したCMイラストをはじめ、数多くの有名作品を手掛けているイラストレーターの近藤達弥さんが担当
「シンデレラ」のイラストは、著名人を起用したCMイラストをはじめ、数多くの有名作品を手掛けているイラストレーターの近藤達弥さんが担当


――たしかに、アバターへの距離感、認知度が変わりましたよね。
【國則圭太】はい。ですので、単純な発想です(笑)。

――プロダクトの特徴について、教えていただけますか。
【國則圭太】アバターを入れたシステムを考えていたのですが、アバターを入れる絵本が何社かあって、特に海外でベンチマークしている会社が世界中に展開しています。そのサービスは、2Dのアバターで、キャラクターが6人くらいいて、肌の色を選べるといったカスタム内容でした。最初は僕たちも2Dのアバターを検討していたのですが、仕組み上、パーツ数を増やすと裏側がとんでもないシステムになってしまうんです。例えば、ポーズや後ろ姿を表現するには、全部を描かないといけなかったりする。一方、3Dモデリングされたものを生成できれば、360度のデータがあるので、解決できるのではないかと考え、3Dモデルのアバターをつくりました。特許を出願しているところがなかったので、すぐに「3Dアバター絵本ギフトシステム」でビジネス特許を出願しました。

――利用ユーザーについて教えてください
【國則圭太】会員様や公式LINE、TwitterなどのSNSフォロワーの属性を見ると、20代後半から40代前半の女性の方が最も多く、ママの方が多いのだろうと思います。

ÉHON INC.創業者の國則圭太さん
ÉHON INC.創業者の國則圭太さん【撮影=樋口涼】

――このプロダクトで実現したいことを教えてもらえますか。
【國則圭太】みんなのコミュニケーションを豊かにするための、ひとつのツールになったらいいなと考えています。コロナ禍になり、人との心のつながりの大切さを、みんながすごく感じているなかで、SNSをはじめ、ライトに効率良くコミュニケーションが取れるサービスにはメリットがありますが、相手の顔が見えない形も多いですし、想定とは少し違ったコミュニケーションが発生してしまうこともあります。僕は、リアルに相手の顔を見てかわされるコミュニケーション、その空気感を大切にしたいと思っていて、弊社のサービスで大切な人と心がつながるツールをつくっていきたいと考えています。ビジョンとしては、大切な人に絵本を贈り合う文化をつくりたい。それが文化になれば、このサービスはもっともっと広まるのではないかと思っています。

――その実現に向けて大切にしていること、具体的に取り組んでいることがあれば教えていただけますか。
【國則圭太】僕たちは、絵本製作サービスではなく、アバターコミュニケーションサービスを展開する企業です。アバターはデジタルですが、基本的にはハイブリッドで存在するようなサービスにしたいと考えていて、もちろんデジタル展開をしますが、アウトプットとして手に取ってもらえたり、直接コミュニケーションが取れるようなスペースなどをつくり、直接の対話やコミュニケーションを広めていきたいと思っています。

――コミュニケーションのスペースも構想しているんですね。
【國則圭太】そのための手段として、まずはアバター絵本を展開しています。将来的には“絵本ランド”のようなテーマパーク的なところまでつくっていけたら、最高だと思います。それがディズニーランドのように大きなスペースでやることなのか、もしくは、小さくても全国につながるようなスペースがあって、各地で連携を取りながら、メタバースとリアルの体験が提供できるような仕組みもおもしろいと考えています。ネットワークでつながりながらリアルな体験ができて、心のつながりを生み出せるようなもの、そんなイメージをしています。

――ウォルト・ディズニーのようですね。
【國則圭太】そこまでいったら最高です。先ほど話した、「人生を賭けてできる事業なのか」を膨らませるとこうなります(笑)。

――事業への“想い”、ここが大切ということですね。どんな仕事もそうだと思いますが、この“想い”があるかどうかで違ってきますよね。
【國則圭太】違うと思います。当然、こちらのモチベーションも違いますし、最終的には社員やステークホルダーのみなさんにも「素敵だ」と思ってもらえるような事業にしていきたいです。

ÉHON INC.創業者の國則圭太さん
ÉHON INC.創業者の國則圭太さん【撮影=樋口涼】

――次に國則さんのキャリアについて教えてください。
【國則圭太】大学を卒業後、就職はせずにデザイン専門学校に進み、2年間学びました。キャリアのスタートはグラフィックデザイナーです。小さな制作プロダクションに6年ほど所属して、そこにはグラフィックデザイナーとして入りましたが、空間デザインや映像、撮影なども経験させてもらい、クリエイティブの業務を幅広くこなせるようになりました。仕事内容としてはBtoBだったので、もう少しユーザーのリアルな反応を体験したいと考えるようになり、次の転職先に選んだのがイベント制作会社です。テレビ局のイベントや展示会など、リアルなコミュニケーションを取りながら、さまざまなジャンルのことを行う会社で、そこには空間デザイナーとして入りました。こちらは、BtoBtoCですね。顧客のリアクションも直接わかるので、すごく大変でしたが、学ぶことが多くありました。そこで1年半続けたころに長女が産まれて、イベント会社だったこともあり、忙しくてなかなか家に帰れなくて……「あれ」となって(苦笑)。正直、希望を抱いて独立したというよりは、「いったん時間をつくらなきゃいけないな」という思いもあり、32歳、33歳のころですが、フリーランスとして活動をスタートし、独立しました。

――独立への不安はありましたか?
【國則圭太】お金の面は不安でしたね(苦笑)。でも、そもそもデザイナーとしての給料が高くなかったのと、自分にお客様がついていることがわかっていたので、「今の給料の3分の2くらいは最低稼げるだろう」と思っていました。たとえばコンビニで働く時間も足して、「今と同じ時間働いたら今の年収になるだろうから」と考えました。時給換算すると500円以下くらいでしたから、「コンビニで同じ時間働いたらもっと稼げるだろう」と思ったりもして(笑)。「じゃあ、やってみようかな」みたいな。「ダメだったらまた転職しよう」と思ってやってみたら、意外とお客様がついていて、案件をいただいたり、いろいろなことに挑戦できました。

――起業を今振り返ってみると?
【國則圭太】これは自分の性格の問題なのかもしれませんが、言われたことをずっとやり続けるのが苦手でして…やることを自分で決めたいタイプなので、意外とこちらのほうが性に合っていました。今の事業をすることも自分で決めて、責任を持って、周りを巻き込んでやっているので、“旗振り役”が自分には合っていたのかなと感じています。

――事業構想大学院大学についても教えていただけますか。
【國則圭太】東京・仙台・名古屋・⼤阪・福岡と、全国に5拠点あって、僕は表参道にある東京校に入学しました。1学年40人くらいで、生徒はビジネスパーソン。大手企業の新規事業担当社や営業事業部長などMBAを取るような方が違った勉強をしに来たり、自分探しに来たりする方が多かったです。ここでの出会いはすごく大きかったですね。

――絵本という新規ビジネスについて具体的なことを学ぶための入学だったんですか?
【國則圭太】どんな事業をしたらいいか、それを見つけに、そのヒントを探しに来る人が多い中で、僕は「絵本事業をスケールさせるにはどうしたらいいか」という考えでした。このテーマがブレることなく学んでいましたね。

――より効果的に活用できたと感じていますか?
【國則圭太】授業の内容もそうですが、そこで出会った人が仲間になってくれたり、クライアントになってくれたり、クラウドファンディングで応援してくれたりして、仲間が増えたことで授業料は十分に回収できたと思います(笑)。

――國則のシゴト観についてお聞きします。仕事において大切にしていることは?
【國則圭太】端的に言うと、約束を守ること。納期であったり、「やる」と言ったらやり切ること、途中で投げ出さないことですね。もともとクライアントワークが多かったので、この部分はちゃんとしてきました。それから、言われたことだけをやっているとプラスアルファがないので、自分の知見を活かした提案をしながら、もっといいものをつくっていくように心掛けています。お金のためだけに動けばたしかに儲かるかもしれません。でも、そこにばかり焦点を当ててしまうと心がブレるので、自分の中で「いいな」とか「大切だな」と思うことを優先してやっていきたいと考えています。

――リーダー論についても教えてください。自分の掲げたビジョンに仲間を巻き込んでいくために、想いを伝え切るって難しいことでもありますよね。リーダーとして工夫されていることはありますか?
【國則圭太】伝わらないことはとても多いので、とにかくコミュニケーションを取らなければいけないと考えています。これも自分のシゴト観でもありますが、コミュニケーションがすべて、そう思っています。スキルであったり、他のことはあとからでも頑張れる、何とでもなる。ただ、人と一緒に生きている限り、人生はすべてコミュニケーションだと思っているので、ここは大切にしています。リーダーの工夫という点では、任せること。任せる仕事は完全に任せてしまいます。それで、何かあれば“ケツを拭く”ということを徹底しています。

――任せる覚悟、ですね。
【國則圭太】そんなにかっこいいものではないんです、それしかできないので(笑)。会社には僕よりできることが多い人がたくさんいるので、お任せしています。まず、信頼する。もしダメだったら、改善する。ただ、“ケツを拭く”覚悟だけは持っています。

――「任せる」こと、それはそれで勇気がいりますよね。
【國則圭太】「どこまで任せるか」「どこで引くか」の判断が一番難しくて、失敗することもあります。でも、失敗したとしても、取引先ともスタッフともコミュニケーションをしっかり取っていれば、致命的なことにはならないですね。

――失敗というワードが出ましたが、失敗の乗り越え方やリカバーの仕方について、心掛けていることを教えていただけますか。
【國則圭太】「一番最悪なことって何だろう?」と想像するタイプで、家族の命が奪われるといったこれ以上ない最悪な状況に比べたら、どんな失敗もそこまでのものではないという考え方です。それに比べたらまったくもってたいしたことではないし、後でフォローすればなんとでもなることのほうが多いので、失敗の瞬間はとてもへこむし、きついですが、いったん寝たりしてリセットします(笑)。もちろん、その瞬間はめちゃめちゃ落ち込みますし、今もなお失敗を繰り返していますが、過去の失敗を振り返ると、今ならカバーできそうだなと。その積み重ねがあるので、「どうせ過去のことになる」という考えはありますね。失敗することで、どんどん強くなるというイメージもあります。

――若い世代で起業を志す人にアドバイスをするとしたら?
【國則圭太】逃げなければいいんじゃないかと思います。若い頃の起業には、当然、未熟さも伴うものだと思いますが、やり切る覚悟、ケツを拭く覚悟といった“本気の覚悟”はあるのか、ということです。個人的には、目的がお金稼ぎだけになってしまうとダメだと思います。でも、「これをやりたい」という目標を立てて、「絶対にやるぞ」という覚悟がある人は、仮に失敗をしても必ず蘇って、成功して、成長していくんだろうなと思います。若いうちに起業される方は、僕と同じ年齢になる頃には、大御所の経営者になっていると思いますし、すごくいいんじゃないかなと思います。もちろん、必要な資質はあると思います。ずっと社長をやっていたけど、サラリーマンに戻った友人もいます。そこには資質の違いがあって、「支えるのが得意な人」と「旗を振るのが得意な人」がいるんだと思います。自分はどっちなのか、それに気づくタイミングも重要だと思います。

――優劣の話ではなく、おっしゃる通り資質かもしれませんね。
【國則圭太】個人的な経験からすると、“人に任せられない人”は起業は難しい気がします。「すべてを自分でやらないと気がすまない」となると、時間も足りないし、スキルにも限界があります。あと、好かれないですよね。ちょっとダメな人のほうが好かれます(笑)。僕は楽観的なので、失敗してもメンタル的にやられないところも向いていたのかなと思います。もちろん、全部を緻密に計算している天才経営者もいると思いますが、僕はそのタイプではないですね。

――事業をスケールさせるためには、やはり、任せることが大事だと。
【國則圭太】事業を大きくしたければ、やはり自分の手を離れるところをつくり、どれだけ人を巻き込めるか、自分が持っていないモノをどれだけ集められるかが大事だと思います。

ÉHON INC.創業者の國則圭太さん
ÉHON INC.創業者の國則圭太さん【撮影=樋口涼】

――國則さんにとって仕事とは、ずばり何ですか?
【國則圭太】正直、仕事とプライベートをあまり分けられていないかもしれないです。サラリーマンのときは「何時から何時まで」という仕事だったものが、経営者になってからはすべてが仕事に直結しますし、ここから先、新たに友達になるのも、きっと「仕事を一緒にしたいな」と感じる人だと思います。すべてが仕事ですね。人生が仕事になっちゃっています(笑)。もちろん、それはネガティブなものではなく、僕が「やりたい」と思うことをやれているので、起業家はそういうことができる仕事なんだと思います。「ずばり一言」で答えられなくてすみません……。仕事とは“〇〇〇〇”と言いたいのですが。「仕事とは人生」っていうのも普通だなって(笑)。

――いえいえ、同じことを聞かれたら、こちらも答えるのは難しいですし(笑)。
【國則圭太】絵本の事業をしているので、子どもたちに、なかば無理矢理、「この本を買って読もうよ」って言ったりしています。実際は嫌がっているかもしれないですけど(笑)。でも、子どもたちも、楽しそうなパパを見てくれている感じがしてきています。「遊んでる」「絵を描いてる」というイメージを持ってもらっているようで、「絵本をつくっているパパが楽しそう」という背中を見せ始めることができてきたので、ここもうれしいポイントですね。

――絵本の事業には夢がありますね。
【國則圭太】しかもメッセージを込められるので、小さいときに贈った絵本でも、ハードカバー仕様のしっかりした素材ですから、とにかく捨てにくいものにしたいです。10年後、ふと見たとき、その当時のお父さんやお母さんなど、絵本を贈った人のメッセージが入っていることで、当時の「おもしろい」と思っていた単純な感情から、「こんな想いで贈ってくれたんだ」という気づきがプラスされ、10年越し、20年越しの“イイね!”がもらえるようなものになればと考えています。親子3代100年の絵本がつくれたら最高ですね。

――絵本の可能性ですね。
【國則圭太】やはり、絵本を商材に選んでよかったのは、誰も嫌悪感を持っていないところです。最初は、『アンパンマン』をつくりたかったんです。やなせたかしさんが生み出した『アンパンマン』はやっぱりすごくって、特に、1歳から3歳くらいまで、日本に住んでいる限り、子どもたちが“呪い”のように「アンパンマン!」っていうじゃないですか。あれは、すごいビジネスモデルだと思います。みんな好きだし、本当にいい作品だと思います。ある意味、同じように、絵本って、みんな知ってるじゃないですか。アンパンマンと絵本なら、対抗できるんじゃないかと考えたんです。もちろん、アンパンマンの絵本もありますが、枠、概念の話として。一方で、市場はそこまで大きくないところもありますから、展開はいろいろと考えなきゃいけないと思っていて、今進めようとしている「コミュニケーションギフト」、「コミュニケーションサービス」のひとつのツールとしてスタートしたという感じです。これは、個人向けもそうですし、企業向けにも進めています。企業案件としての相性もすごくよくて、「想いを伝える」とか「お客様にこの絵本をつくってプレゼントする」とか、いろいろなメッセージを伝えられるので、そういう案件もいくつか進んでいます。

――最後に、國則さんの今後の野望について教えてください。
【國則圭太】スタートアップで今年(2022年)2月に設立して、資金調達の1回目が落ち着いて、2027年に向けてIPO(新規株式公開)を目指しています。その過程で「国内No.1ギフトサービス」といわれるまでに大きくしながら上場し、その先には、先ほど話した「絵本ランド」のようなところを目指しています。そうすれば、子どもが生まれるたびに触れるようなサービスになって、メッセージや想いを贈り合う文化をつくっていけるんじゃないかと考えています。

――壮大な野望ですね。
【國則圭太】人生の野望としては、テーマパークをつくった人生。そういう人ってあまりいないですよね。それこそ、ウォルト・ディズニーに勝つ日が来るかもしれない(笑)。絵本とかコミュニケーションサービス、アバターを使ったサービスはグローバル展開できるので、それこそ海外のいろいろな国と日本でコミュニケーションが取れるようなスポットができるかもしれないですし、地球上に広まったらいいなと思います。

――贈りたい相手がいる以上、持続するサービス、事業になりますね。
【國則圭太】絵本でいうと、誕生祝いとか入学・入園祝い、結婚祝い、加えて、自分史的なものとか、最終的には遺言絵本といったところまでイメージしています。人生のイベントに沿ったテーマでつくっていければ、ライフタイムバリューも上がっていくし、それこそ文化になっていくだとうと考えています。

この記事のひときわ#やくにたつ
・クラウドファンディングでニーズと“応援シロ”を探る
・自分の中で「いいな」とか「大切だな」と思うことを優先
・失敗は「どうせ過去のことになる」

取材・文=浅野祐介/撮影=樋口涼

ÉHON INC.
https://ehon-inc.jp/

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